罠2 ページ19
イゾウ視点
めっちゃめちゃにがんもどきが美味すぎる。流石コックたち。しかしどうしても気になってしまうのはサッチの挙動だった。
「どうした、ソワソワして落ち着きねェな」
「い、いやぁ〜？」
せっかくのがんもを落ち着いて食べれない。ぜひ夕飯のスタメンにしてほしいのに、こいつの動きのせいでなんとなく味が薄く感じる。
「気になるっつーの！なんなんだよ！」
「いいから、がんもに夢中になれ！」
なんだ夢中になれって。集中しろなら分かるけど。
それに本人には言わないけれど、味は薄く感じるがもう夢中も良いところだ。かじかんだ手で食べた温かいがんもどきの感動を思い出す。菊と一緒に拾われたあの日、俺は一生を捧げたいと思えた人に出会った。
「白きっちゃんを頼む」と言われた以上、投げ出すわけにはいかない。
だからAが逃げたら俺は追いかけることができない。海賊を放棄して捕まえることができないから、手元に置いておいて全てから守るんだ。
俺は欲張りな海賊だから、おでん様のこともAのこともどっちも捨てたりなんかしたくない。
がんもどきを食べ終わった。するとサッチが目を見開いた。
「食べ終わんのはっや？！」
「？」
サッチは段々と青ざめていく。なにかマズイことでもあるのか。不審に思って眉を顰めた。
「イ、イゾウ？がんもどきの作り方教えようか？」
「今はいい」
「じゃあおでんの具の話し合いを…」
「なんだよ、なんか変だぞ」
がんもどきの余韻も醒めてきた。すると胸の内側が空洞になったような感覚。何か足りない。
心臓がヒュッと音をたてた気がした。
「A…？」
ぼんやりとしか感じていなかった気配は知らぬ間に部屋から消えて、別なところに行っていた。
敵は案外近くにいたらしい。
俺をがんもで釣ってその間に連れ出す作戦か。夢中になっていれば油断して、Aを連れ出されても気づかれないとでも思ったのか。
…大正解だったのが癪に障る。Aに何かあってからでは遅いんだ、常日頃から意識を張り巡らしておかなければならなかった。
サッチの頭を蹴り飛ばして甲板に走る。
Aの側にいるのはティベイ、他数人が周りでうろうろしている。
Aがいなくなってしまってからでは俺はどうすることもできないんだ。俺の手の届くところへ、定位置へ戻さないと。
今行くぞ、A
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作者名：はなやぎ | 作成日時：2023年10月18日 7時
