病を治すはずなのに【イゾウ】 (ページ18)

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罠ページ18

顔は見えないけど確か1番隊の人だ。声だけじゃ名前出てこない。

「お前らは【普通】から外れてると思うぞ」

『それでも全然良いと…』

「なんで【普通】が普通になると思う？それが多くの場合最適だからだよ」

友達の、仲間の必死の訴えを疑う気は毛頭ない。でも自分を客観的に見ることが未だできそうになかった。

「本当にやりたいことは…？」

『イゾウさんと、別れたくない』

「うん、あとは？」

『傷つけたくない』

「おう、ひとまず全部言ってみな」

ティベイと数人の仲間の相槌を聞きながらゆっくりと口を開いた。

『たこ焼きが食べたい…流星群がみたい』

「うん、いいじゃん」

『ウィンドウショッピングがしてみたい、イゾウさんとワノ国のカブキ？を見てみたい。髪色を変えてみたい』

「楽しそうだな」

虹をまた見たい、ティベイとカフェに行って女子会したい、ナースのみんなと船を抜け出して焼肉パーティーしたい、サッチに料理を教えてもらいたい、ビスタと紅茶の美味しい淹れ方を研究したい…

ポロポロとやりたいことが溢れてくる。イゾウさんに何が欲しいと訊かれても暇つぶしとしか答えなかったのに。
潰す暇なんて無いくらい私にはやりたいことがある。

「それがイゾウのために諦めてたことだ」

『うん』

「だからさ、今は自分を見失いがちなイゾウともっかい腹割って話してみなよ。Aに依存しているからイゾウはAのことを縛っているように見える。Aはよく知ってんだろ？」

何を？

「イゾウは依存する必要なんてない程に強いって」

「そうだぞ、おでんがいた時なんて人に全く頼らなかったんだからな」

「口挟むなバカ！」

イゾウさんは私よりずっとずっと強い。だから私に依存するなんて考えたことなかった。

「Aを幸せにできる程度にはアイツは良い男だよ。Aのためなら、もっと良い関係を築くことができるはずだ」

「Aが幸せじゃないなんて、アイツの性格を考えるとすっげぇ怖ェと思ってるよ…多分」

「イゾウならな！俺なら思わないけど！」

私のやりたいことをやって、それでいて二人とももっと楽しい暮らしができるならそれ以上のことはない。それならイゾウさんが泣いてしまうこともなくなる。

じゃあまたイゾウさんと話し合ってみよう。
そう思った時のことだった。船内への扉が開いたと理解した瞬間目の前が真っ暗になった。