病を治すはずなのに【イゾウ】 (ページ15)

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気づくページ15

Aは少し寂しそうに笑って顔をあげた。

『一緒に行きたいけど…イゾウさんが悲しんじゃうからやっぱやめとくよ』

「イゾウに聞いたけれど、断固として行かせないという様子ではなかったぞ」

『うん、いつもそうだよ』

「じゃあどうして！」

Aは何度もイゾウの頼みを無視して外に出て、不思議に思っていた。実はモビーには取り付け型の鍵がある。なのにイゾウはそれを使わなかった。言わばいつ自分が逃げるかわからない状況だった。

イゾウは、自分がAを強制的に閉じ込める権利なんか無いと分かっていたのだった。

『確かにイゾウさんは私を強引に連れ戻したりしてないよ。イゾウさんはただ悲しむ…私はそれが辛いんだ』

「そんな……」

ティベイは何かを言おうとした。しかし近づくイゾウの気配を感じ取り、それ以上は無理だと悟った。

『おかえり〜』

「おう。…ティベイ、どうだった？」

「断られたよ、あんたを悲しませたくないってね」

イゾウは優しく微笑んだ。

「A、ありがとう」

『えへへ…』

誰であろうと絆されるレベルの笑顔を独り占めしているAは分かりやすく照れた。
この光景は側から見れば幸せそのものだろう。でもティベイはイゾウを不審な物でも見るような目で眺めてから部屋を出た。

ティベイは明日着る服を用意しようとした。Aと一緒に出るからと普段は着ないスカートを準備しておいたのに、一人でも着るか？
首を振った。少し考えて動きやすいいつもの服を枕元に置いて布団に入った。

今日のAの話を聞いて分かった。イゾウを悲しませたくないのは本心、でもそのために犠牲にしていることが多すぎる。Aが心に閉じ込めている思いは、本来自由に解き放たれるべきものだ。
それにAは気づいていない。そしてイゾウも。

ティベイは友だちのために行動することを決めた。