愛する人よ ページ12
イゾウがティベイを呼ぶと、ティベイはとてつもなく嬉しそうな顔でついて行った。Aに会える、それだけでイゾウに感じた違和感も薄れていった。
「あ！Aの好きなお菓子持ってきたんだ！先に行っててくれ！」
ティベイは一度自分の船に戻っていった。イゾウはAが居るであろう部屋の扉を開けると、涙を流す最愛の人を抱きしめた。
「ごめん、本当にごめん。強く言いすぎた」
『私は……みんなに守られてしかいない…何もしていない！イゾウさんに全部やってもらって、私に存在価値あるの？！』
「なんでそんなこと…」
『イゾウさんは、私はイゾウさんがいないと生きていけないって思ってるんでしょ。戦えもしない、雑用も見張りもしない』
Aはイゾウの胸板を叩いた。それ以上言葉を紡ぐことはできず、ただ声を殺して泣いた。
「…俺の、生きる意味なんだよ。Aが居ないと……生きていけないのは本当は俺の方なんだ」
『イゾウさんは……私をどうしたいの！何もさせないで、私を自分のお荷物状態にしてさ！』
イゾウは鼻声のAの顔を大きな手で包んだ。そして目を合わせて微笑む。
「愛したい」
鼻水と涙でぐちゃぐちゃの顔。Aはすぐに逃げようとしたがイゾウがそれを許さない。鼻水がつくのも気にせずにイゾウはAにキスをした。
『汚い、よ』
結局ティッシュで拭くイゾウをAは睨んだ。
イゾウはそんなこと気にも留めずに笑みを浮かべる。
「汚いなんて思わないが…例え血がついても汗がついても俺はAに口づけをする。いいな？」
Aは顔を逸らした。
「いいか、Aのことを俺は背負いたいんだ。苦でもなんでもない。むしろこんなに幸せでいいのかって疑ってしまうほどだ」
『でも…』
「うるさい。良い加減覚悟決めて俺に捕まってろ。何があろうと離す気はない」
『私が、イゾウさんを傷つけても？』
「Aにつけられた傷なら大切に傷跡として残しとくさ。…これ以上何か言うならまた口を塞ぐぞ」
Aは顔を全部拭くとイゾウを見つめた。
『まだまだ言い足りない』
「それは、もっとしろってことだな」
しかしイゾウは近づくティベイの気配を感じ取って、Aから距離をとった。
「抑えがきくうちに離れとく。ティベイと二人で楽しむといい…くれぐれも危ないことはするなよ？」
『うん、ありがとう』
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作者名：はなやぎ | 作成日時：2023年10月18日 7時
