出航 ページ2
モビーは変わらず進んだ。今はポツポツと雨が降っていて、どんよりとした雲が気分を下げる。
『イゾウさんイゾウさん、この本めっちゃ面白いんだけど』
「俺も読んでみるかな、どんな話だ?」
『怠惰な主人公が海に落ちたらやる気に満ち溢れてなんやかんやするお話』
「悪いがすっげぇつまらなそう」
『いや、結構伏線回収する系の重めのお話しだよ』
「そんなコミカルなあらすじで?!」
Aはイゾウの持ってくる本だったり、イゾウと話したりして暇を潰していた。イゾウもイゾウで長く部屋を空けることはなく、Aを引き留める張本人としての責任を果たしていた。
いつの間にか雨は強くなり、揺れも激しくなっていた。するとピカッと窓から光がさすと、雷の音が爆音で響いた。
『うわっ…めっちゃ降ってる!!』
なおAは悪天候であればあるほどテンションが上がる系である。
『雨に打たれてきたい』
「この天気で外に出るとかバカだろ流石に」
イゾウの本気で引いた目を見てAは視線をずらした。
イゾウはあれから本当にAに危険が及ばないように徹底した。一度敵がAが控えていたイゾウの部屋を外から砲撃したときは目の色を変えて殲滅したが、それ以外は大した脅威もなく平和に航海していた。
「飯できたぞ〜!!!」
サッチらしき人物の声がした。コック陣はこうして毎日モビーに飯時を伝えるため、とても声が大きい。イゾウとAにもよく聞こえた。
「取ってくるな」
『いってら』
イゾウはのんびりとした足取りで部屋を出た。Aはいつも通りその背中を見送った。
残されたAは暇そうにまた本を開いた。それと同時に机に積まれていた本がどさどさと落ちた。船の揺れが激しくなっていたのだと思い、Aはため息を吐いてそれらを拾うと綺麗に床に置いた。
今日はやけにイゾウが遅い。気にすることはないか、と机を拭いて待っていた。
やっと帰ってきたイゾウと一緒にご飯を食べた。するとAは突如眠気に襲われてイゾウに布団へと運ばれるのだった。
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作者名:はなやぎ | 作成日時:2023年10月18日 7時