排除 ページ15
イゾウ視点
夜になった。いつも通り眠るAにキスをしてからAの服や身の周りの物を用意する。しかし今日はちょっとだけ外に出なければならない。
「お前…それは浮気だろ」
「俺が何しに行くのか知らないだろうが。女捕まえに行こうってんじゃねえよ」
引き留めてきた仲間に口を尖らせながら答えた。心底興味がなさそうにこっちを見ている。視線を背中に感じながらモビーを降りた。
気配は覚えている。あとはそれを辿るだけ。
するとある酒場に着いた。
「いらっしゃい！！」
大きな声で迎えられた。居酒屋のテンションは久しぶりだ。船で飲むことの方が多いから少し驚いた。
「お好きな席どうぞ〜！」
下品な笑い声が響いている。満員ではないが人はそこそこ。大きなグループが一つあって、その中にソイツはいた。
「んで？？失敗とな」
「そうなんだよ…押しに弱そうだったからいけるかと…」
「初めてのナンパで男の妨害か！！元気出せって！次がある！」
「もうやらないよ…僕には向いてない」
今日、Aに声をかけたことについて話していた。やはり不純な気持ちを持っていたんだと思うと身体の内側が沸々と煮えくり返る。
髪は下ろしてるし化粧もしていない。着ているものも違うしバレないのだろう。それを利用して近づいた。
「お久しぶりです」
「…えっ？あ、ああ！お久しぶりですね！」
「懐かしいですね！仕事のお仲間さんですか？」
知り合いを模して声をかけた。顔には恐ろしいくらいの笑みを貼り付けて。
「いえ、友人です」
「そうでしたか。でしたら少し、お話させていただけませんか？」
「…勿論です！私もこんなところでお会いできてとても嬉しいです！」
「せっかく会えたところ申し訳ないのですが明日も立て込んでまして、本当に少しになってしまいそうです…お顔が赤いようですのでお外に出ましょうか」
そいつだけ一人で連れ出すことに成功した。そして外の空気に当たろうと提案した。外はじめじめとしていて店内の方が涼しいが、空気は良い。
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作者名：はなやぎ | 作成日時：2023年8月6日 18時
