ストーキングクロロ (ページ3)

今日:1 hit、昨日:8 hit、合計:8,285 hit

ミーティングページ3

「や、A」

仕事終わり、メールに至急と呼び出されてとあるバーに来てみれば、瞳をすこしとろんとさせたAが大人しくカウンターに座っていた。

手を軽くあげて注意をこちらに向ければﾊｯとした表情をこちらに向ける。

「あらイルミ…遅かったね？」

オレと認識した途端表情を元に戻しふ、と表情をやわらげたA。

遅かったと言われたが仕事終わりでものすごく急いでこちらに来たのに労いの一言もないのはどうかと少し顔を顰めた。

「だってそんなに難しい仕事じゃあなかったでしょうに。」

何にそんな時間がかかるんだかとため息を着くAはオレンジのようなピンクのような、明るい色のカクテルの入ったグラスを傾け数回嚥下してみせる。

たいしてオレは、今更なぜ俺の仕事の詳細まで知っているのか、とはもう聞くのも無駄な気がして口を噤んだ。

「で？クロロの居場所つきとめられたって？」

つい最近ビジネスパートナーから聞いた、幻影旅団の団長が何やら"変な女"に付きまとわれてるらしい、という情報を思い出し俺は問いかけた。

待ってましたと言わんばかりに瞳を輝かせたAはカウンターに両肘を着いた状態でオレの顔を覗き込み話し出した。

「へー…イルミももう知ってるのかぁ。なんか感慨深いなぁ……ええ、そうよ。つい数日前から私たち、2人で暮らしてるの」

最後の方は語尾にハートマークやらがつきそうな声色で頬を上気させて言うA。

聞いて聞いて？とここ数日の生活状況を事細かに説明してくるが、本人の脚色・着色がなされてもなおストーカーと言うには十分すぎる証拠が揃っていた。

大体なんだ。

好きな男がとある目的のために別の女を抱いてるところを盗撮して"女を抱く彼コレクション"にしてみたり、好きな男の困った顔見たさにとある宝を先に盗み出して他の場所に展示したり、それによって出るはずのなかった数十人単位の被害者が出たり。

やはり無邪気とは末恐ろしいと半分呆れて話を聞いていた。

とはいえ彼女の表情は正真正銘恋する乙女そのものだった。

本当に顔がいいだけに、普段あまり飲まない酒を飲んだことも相まって色気が放出されつつあるA。

周りの男どもがこちらをチラチラとみて唾をごくりと飲み込む様も不快だし、第一この会話が聞こえてないからそんな気(・・・・)になれるんだと少し苛立ちを覚えた。