第二十話 ページ20
檜「椙山は、雰囲気とか変わったな」
「まあね」
檜「なんかこう、かっこよくなった」
「うん」
色とりどりの世界に気を取られていたらぽつり、檜山くんが声を放つ。
やっぱりこれだけ音がうるさいと聞こえずらい。
さっきより半歩、彼に近づき耳を傾ける。
「……檜山くんさ、正直気まずいでしょ？あの時のことは忘れてさ、普通の友達みたいに接してよ」
その方が私も楽だし。
そう伝えれば少しだけ目を見開いてほんのすこし、顔を歪ませる。
なんでそんな顔になったのか不思議だったけど、きっと気まずいのがバレたんだなんて思ってた。
そりゃ告白した相手とそれを振った相手が二人でいるんだもん。過去のこととは言え私だって気まずかった。
それに、私はまだ、
………その先に想う事はもう二度と伝えられないのだろうけど。
檜「…そうだな。それなら、これからもこうやって話しかけてもいい？」
「えっ、うん、もちろん」
檜「クラス違うけどさ、もし良かったらだけど一緒に昼ご飯とかも食おうぜ。
光輝とかも誘ってさ」
「檜山くんと一緒に食べてる子が良かったらだけど」
檜「多分平気。ほら、同じ中学だった深田だから」
「……あぁ、」
いや絶対覚えてないやん！ってちょっと関西口調でつっこむのも、目が線になる程笑うのも、やっぱりちょっとだけ視線が合わないのも、あの頃から変わらないなあって。
檜「多分深田も椙山のこと見たら驚くと思うよ、あいつあんま中学の頃と変わってないし」
「そっかあ」
檜「ほんとに覚えてる？」
「うん、多分、きっと、かろうじて」
檜「うっわ！その反応はダメなやつ！深田に言ってやろ」
「それは違う！！」
ああ、良かった。私、ちゃんと檜山くんと話せてる。
きっと向こうだってもう気にしてない。ちゃんと友達になれてる。
そう、思わせて。
「……そうじゃなきゃ、私」
檜「ん？ごめん花火の音でかくて聞こえなかった」
泣きながら手放したこの髪を、もう一度伸ばそうとしてしまうから。
早く可憐で小柄で柔らかい、かわいい彼女を作ってよ。
それで私のこと、お前じゃ無理なんだぞって思い知らせて。
「ううん、なんでも」
私たちの最初の、夏が終わる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 346人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
塩麹。(プロフ) - ふうかさん» ありがとうございます！地道にゆっくりと頑張らせていただきます。更新を楽しみにお待ちください！ (2021年12月14日 1時) (
レス) id: cc7b208a8b (このIDを非表示/違反報告)
ふうか - すごく面白いです!!続きが気になります!!更新待ってます！！ (2021年12月13日 1時) (レス) @page24 id: c4a626600f (このIDを非表示/違反報告)
塩麹。(プロフ) - Hano.さん» ご報告ありがとうございます。見直し次第修正させて頂きます。 (2021年9月21日 20時) (レス) @page7 id: cc7b208a8b (このIDを非表示/違反報告)
Hano.(プロフ) - 7話の主人公の名前がなぜかAになってます。 (2021年9月21日 16時) (レス) @page7 id: ab344dd67b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：塩麹。 x他1人 | 作成日時：2021年9月17日 23時
