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05.性分の影響力 ページ7

迅速かつ俊敏に会社の事務服に袖を通す。
ばたばたと部屋中を駆け回った後、家の鍵を掴み唖然とする少年に向かって投げる。

「鍵っ!預けとくね」

弧を描いて見事に少年の手元に収まる。ナイスキャッチ。あわあわと慌てる彼に出来るだけ簡潔で明白な説明を心がけるが、如何せん、まとまらない。

「これから仕事なのでよろしく。
此処ににいたくなければ戸締りをして、鍵は、そうねぇ。プランターの下に隠して置いていて。もちろん、行く宛がないのならここに居ればいいから。茶漬けは食べてい――」

「あの、一寸待ってください。僕達って昨日出会った関係ですよ。そんな身元も不確かな人間に鍵なんか預けて……」

最も確かな言い分だ。
顔をしかめて不安そうな表情からは私の身を案じる優しさが滲み出ている。
だが、生憎と私の見解を懇切丁寧に説明する時間は無い。
書類が多々入った会社用の鞄の取っ手を掴みながら答える。

「私ってね。見る目あるの。酒飲んでたじゃんって言われたらおしまいだけども…」

今度は早足で玄関まで行き、ローヒールのパンプスに手をかける。少年は話の続きを催促するように不安そうな顔をしつつも玄関まで出向いてくれた。
うわぁ、まさにお見送りされるシュチュエーション。おいしいわ。
なんとも煩悩な感情を即座に打ち消し少年と向き合う。

「ぶっちゃけのところ私の直感!
あと、これまでの経験上から大丈夫だって思ってる」

「……僕は」
彼はハッとした顔をすると口元を手で覆った。
まるで紡がれる言葉を必死に飲み込んだような一連の流れである。
少々時間を置いて両手が退かされると唇が小刻みに震えていた。
「……僕は、貴方に迷惑をかける」
絞り出したか細い声は空気を振動させ小さな波を鼓膜に届ける。
得体の知れない大きな塊が彼を蝕んでいるのだろうか。
その塊は苦悶なのか、はたまた先を案じた憂いなのかは分からない。
だが、唯一言えることは……。

「迷惑かどうかは私が決めること。それは誰にも決められないし決められたくない。」

「っ!」

「だから、もしも行き場が無いのなら此処に留まるのも一つの手じゃない?」

驚愕に染まった瞳にめがけて不敵に笑いかける。
彼の返事は待たずドアを開け、1歩外へ踏み出す。立て付けの悪いドアが後方で鈍い音を鳴らしせば完全に閉じきる。

すぐに心を入れ替え頬を叩いて戦闘モードへ。それでは、脇目もふらずに会社まで疾走しなくては。せっかくの遅刻欠勤なしの実績が……よしっ走ろう。

06.「そっかぁ」→←04.拝啓、神様



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作品ジャンル:アニメ
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(プロフ) - 黒猫さん» コメントありがとうございます!こんなハチャメチャな夢主、需要あるのかな?と不安だったので、そう仰って頂けると嬉しいです!オチはですね……。後々あかしますね。個人的にオチを先にお知らせするというのはどうにもピンとこなくて……個人的な見解で申し訳ないです (2017年7月28日 18時) (レス) id: b086ef1462 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫 - うわぁぁぁ文才ありすぎません?設定がしっかりしてて読んでて楽しいです!!渡辺ちゃんの謎?も気になりますし…笑笑。あと気になるのはこの小説って誰落ちなんですか?(太宰さんがいいなぁ…←図々しい汗)更新頑張ってください!!! (2017年7月26日 13時) (レス) id: a8e89100ce (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2017年7月2日 15時

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