21.あとしまつ ページ27
小刻みに鳴り続けるスマホを一瞥する。
明け方まで泣きつくしてようやく寝れたというのに。誰だよ。文句をのたれつつも、のっそり起き上がってスマホを耳に宛がう。
電話の向こうから聞こえる相手の口切りに愕然。ボンヤリしていた脳が動き出す。
つかのまの判断で、無言のまま通話終了ボタンを押した。
知らない。私は知らない。
無視を決め込むといった算段を取るつもりが、後方でスマホが小気味よく鳴りつづけるものだから、のちのちの恐怖と今の安泰を推し量かってしまった。
一瞬、ためらいつつも「……モシモシ」と応答する。
「やあ、おはよう。眠り姫」
「……これはこれは真昼間から精が出ることで」
よもや、なぜ太宰さんが私の電話番号を知っているのかというチッポケナ疑問符は捨てることにした。
自身の要求を淡々と述べ、私に口を挟ませない太宰さんに歯止めをかける。
「ちょっと待ってください。平日ですから。仕事ですから」
「Aくんの仕事が激務とは驚いたよ」
「………………何時ごろ伺わせていただけばよろしいでしょうか」
「三時ね」
まんまと踊らされた私であった。
＊＊＊
いそいそと会社に出勤したのち……太宰さんに指定された場所へ時間ぴったりに足を運ぶ。
小さなビルの中で小さな間取りに組み敷かれた一室。
来客用のベルが鳴り響けば、つまりそこは、武装探偵社の事務所の室内である。
数人の見知った顔に催促され、来客用らしき長椅子に腰を下す。
「どうも。お忙しいところお呼び立てして申し訳ない」
座るやいなや、対極に位置した中年男性から勢いよく頭をさげられてしまった。
なんとなく予想はついていたのではあるが。
肝心なことをなにひとつ話さなかった太宰さんに非難めいた視線を送らないと気がおさまらない。
「依頼人に、熱心に頭を下げられてしまったんでね」
どこまでいこうと曲者は曲者。
ふうと一息。いつまでも彼を相手にしていては分が悪いので、疲労が目に見える男性と真正面から視線を交える。
ショックも大きかったはずであろうに凛々しい表情。さすが一国の公務員といったところだ。
「本日は上司として部下の失態を謝罪するためにと一個人として感謝を述べるためにこの場を設けさせていただきました」
目の下に隈をつくった刑事さんは、そう言って何度も謝罪と感謝を口にした。
私はそのたびに当たり障りのない言葉で迎え撃つのだ。
22.片時、羊の皮を脱ぎかける→←20.貴方達へ向けたご冥福
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司(プロフ) - 黒猫さん» コメントありがとうございます！こんなハチャメチャな夢主、需要あるのかな？と不安だったので、そう仰って頂けると嬉しいです！オチはですね……。後々あかしますね。個人的にオチを先にお知らせするというのはどうにもピンとこなくて……個人的な見解で申し訳ないです (2017年7月28日 18時) (
レス) id: b086ef1462 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫 - うわぁぁぁ文才ありすぎません？設定がしっかりしてて読んでて楽しいです！！渡辺ちゃんの謎？も気になりますし…笑笑。あと気になるのはこの小説って誰落ちなんですか？（太宰さんがいいなぁ…←図々しい汗）更新頑張ってください！！！ (2017年7月26日 13時) (レス) id: a8e89100ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：司 | 作成日時：2017年7月2日 15時
