12.拍子音 ページ16
「総務創科ってあの派遣会社が集まってる一帯のことかな?私も用があるものだから良かったら案内するよ」
「ありがとうございます。助かります。では、お言葉に甘えさせていただきますね」
「…………お嬢さん。私が申しでたとはいえ……失礼を承知でお尋ねするけども、よく危機管理能力が不足していると言われないかい?」
そういえばこの前も家に連れ帰った少年から心配されたなぁという事実が頭を過ぎったが、曖昧に笑って誤魔化す。
「気を悪くしたらすまないね。もし私が悪漢だったらどうするのかと思ってね」
「私、そういう勘だけは冴えているんです。
貴方はきっと好漢です」
すると彼は悪びれもなくお腹を抱えあっけらかんと笑った。
「ははははは、これはやられたよ。所望されちゃ紳士にならなくては……。
私は太宰治。お嬢さん、お名前をお聞きしても?」
「渡辺Aです」
そつなく握手を交わし、太宰さんに案内されるがまま歩き出す。
道中は当たり障りのない世間話に花を咲かせるが……なるほど、太宰さんは話がうまい。
何がうまいかって、まず私の返答をあらかじめ予想している点に尽きる。
その証拠によどみのない気負いしない質問が繰り出されるものだから、やれやれ私も饒舌になってしまう。
「最近は物騒な話が尽きないもんだからねぇ。Aちゃんも気をつけ給えよ。って話しているうちにいつの間にかご到着だ」
太宰さんの指さす方向から推測して、左右を見回すと高層ビルが立ち並ぶ。
殺伐とした雰囲気に飲みこまれた職場を想像していたが、なんだか拍子抜けだ。
路地裏からの薄暗さとは対照的に太陽の日が差し込み、鉄筋コンクリートに囲まれた窓ガラスがひかる。
これが、かのポートマフィアの支配会社の集まりだと言われてもどうにもピンとこない。
本社にも見劣りがしないビル達にそんなにお先は真っ暗ではないなと希望の火が灯った。
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司(プロフ) - 黒猫さん» コメントありがとうございます!こんなハチャメチャな夢主、需要あるのかな?と不安だったので、そう仰って頂けると嬉しいです!オチはですね……。後々あかしますね。個人的にオチを先にお知らせするというのはどうにもピンとこなくて……個人的な見解で申し訳ないです (2017年7月28日 18時) (レス) id: b086ef1462 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫 - うわぁぁぁ文才ありすぎません?設定がしっかりしてて読んでて楽しいです!!渡辺ちゃんの謎?も気になりますし…笑笑。あと気になるのはこの小説って誰落ちなんですか?(太宰さんがいいなぁ…←図々しい汗)更新頑張ってください!!! (2017年7月26日 13時) (レス) id: a8e89100ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:司 | 作成日時:2017年7月2日 15時