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『っはぁ、』
途中、色んな人とぶつかったと思う。
何なら岩泉先輩にもぶつかった気もするし、声もかけられた気がする。先生にも怒鳴られた気がする。
だけど今の私には止まる余裕なんてなくて。
足を止められるほどの理由がなくて。
……だって。
「待てって、ほんとに!ストップ!Aちゃん、」
なぜか、花巻先輩に追いかけられて多分数分。
待てって言われて追いかけられて、止まるはずがないでしょう。それに今は無理、花巻先輩の顔を見れる自信はない。
それなのに、
「足速すぎ!ちょ、スピード上げないでよ!」
何で、花巻先輩はそんなに必死に追いかけてくるの。
何回階段を上ったり下りたりしただろうか。
正直、もう足はガクガクだし走りたくない。
……後ろのバレー部の方はあんな事言いながら私より全然余裕そうだけど。そりゃそうか、強豪だもん。レギュラーだもんね。
『追いかけて来ないでくださいっ、今は顔見たくないです、』
「それは普通に傷付くよ!Aちゃん!」
『ごめんなさいっ、でも本心です!』
「こんなに必死で追いかけてるのに、それは悲しすぎ」
私はとりあえずずっと追いかけっこしていても仕方ないと、隠れられる場所を思い出す。
もしかしたらさっきまでいた図書準備室に飛び込んで鍵を閉めてしまえば逃げ切れるかもしれない。だけどそれは一時的なもので、花巻先輩ならずっとドアの前で待っていそうだし、何なら理由をつけて先生から鍵を借りてきそうだ。
だったら…
と、私は廊下の角を曲がって花巻先輩の死角になった瞬間、近くの空き教室に飛び込んだ。
……良かった、鍵開いてて。
そして、教壇の下へ急いで潜ってゆっくりと息を整える。
『っはぁ…』
ってかあの雰囲気って、普通は追いかけて来ないものなんじゃないの?
何であんな全力疾走で追いかけて来たの、花巻先輩……怖すぎ。
っていうか、花巻先輩のダッシュ初めて見たんだけど…迫力やばい。
『……ふぅ、』
どうにか呼吸は整ってきて、廊下からも足音は聞こえず。
『…よかっ、』
一瞬ホッとしたのも束の間。
ガラガラッと。勢いよく開いたであろう教室のドアの音に、肩を揺らす。
「…Aちゃん、いる?」
そして聞こえてきた声に、体を強張らせた。
両手で口元を覆って、息を殺す。
見つからないように、願いながら体を丸める。
もちろん、教室に入って来たのは花巻先輩。
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まあり(プロフ) - 黒瀬将哲さん» ちゃん付け!確かにそんなイメージあります!気にいっていただけたみたいで良かったです…!こちらこそ見つけてくださりありがとうございました( ; ; )! (2022年4月4日 21時) (レス) @page50 id: ff29d485fe (このIDを非表示/違反報告)
黒瀬将哲(プロフ) - マジでヤバかったです!もち、良い意味で!貴大くんがもうかっこよすぎて、所々深呼吸してました笑あと、めっちゃ共感したところなんですけど、貴大くんは「○○ちゃん」って呼んでますよね、絶対!本当に本当に尊くて最高なお話でした!!ありがとうございました!! (2022年4月4日 17時) (レス) @page50 id: 255371873d (このIDを非表示/違反報告)
まあり(プロフ) - 冬桜さん» わーっ!!!解釈違いが起こらなくて良かったです…!こちらこそ読んでくださり、嬉しいコメントまでありがとうございます( ; ; )! (2022年2月24日 21時) (レス) id: ff29d485fe (このIDを非表示/違反報告)
冬桜(プロフ) - 女主が攻めたりって今まであんまりなかったので嬉しいです!!可愛いマッキーが解釈一致すぎて…!!!!ありがとうございますありがとうございますありがとうございます (2022年2月24日 16時) (レス) @page50 id: e2ae2aafdb (このIDを非表示/違反報告)
まあり(プロフ) - しおきゃらめるぱふぇさん» ううう、嬉しいです…( ; ; )ありがとうございます! (2021年8月3日 16時) (レス) id: ff29d485fe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まあり | 作成日時:2021年5月31日 18時