恋する貴女に恋をする【石川界人】

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貴方side





「ただいま」





部屋に投げた私の声は誰かに拾われることなく消えた。
12月、クリスマスの楽しみは小学校で捨ててきてしまった。

世間はクリスマスだからと言い訳し、外はもう人には人が溢れかえっている。尋常ではない人の数に私は目眩がしそうになった。




本当だったら今日は2人でどこかしらに行きたかったけどそんなわがままも言ってられない。





寂しい＿＿＿＿＿＿＿





私には小さな夢が何個もある。頑張れば叶うような小さな夢だ。
横浜アリーナで単独ライブをする、レギュラーのラジオを持つ、とかそんな大きな夢じゃなくて

本当に小さな夢の中の一つ。





大好きな人とクリスマスを一緒に過ごす夢。その夢だけはなかなか叶えられていない。


子供の頃から知っていたアーティストから楽曲制作の依頼が来て、その納期がギリギリなものを仕上げたい。


私の曲の5割にラップが入ってることが多くて、オールラップの曲も出しているからなのか、「クリスマスソング」「ラップが入ったもの」というオーダーまでしっかり受けている。


ヒプマイで培ったラップがこうやって生きるのは嬉しい。





「(クリスマス……なんだろう……)」




一般的なクリスマスソングはきっとつまらない。私にしか書けないものってなんなんだろう。







〜







私は彼から「会いたい」って連絡が来たら凄く嬉しい。9ヶ月経った今もそんな事に一々ときめいて「私も」なんて言っちゃって。

でも私が言ったら、彼は喜ぶのだろうか。






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界人くん会いたい
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そんなこと、どうだっていい。
ただただ会いたいという気持ちだけが先走って、お疲れ様も言わずに送信したメッセージには直ぐに既読が着いた。



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石川界人20時過ぎに行く、着いたら連絡する
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グッドサインを作ったLINE公式キャラクターのうさぎのスタンプが2つ送られてきた。




時計の針の音が聞こえるくらい、この部屋は静かだ。





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