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ビルの自動ドアをくぐって「寒……」と口に出してしまうくらいの気温。暖冬なんて嘘なんじゃないかと疑うくらいには寒かった。
腕を組み、少しの隙間も許さないぞという気持ちで夜道を歩く。都会のギラギラ眩しいこの感じはもはや嫌気がさす。もっと暗くたって良いじゃないか。もっと静かで、もっと穏やかな街になればいいのに。
まぁ、そんな考えはただの願望に過ぎない。
目立つようになってしまった金色の髪の毛を、普段は被らない帽子で隠す。界人くんが家に来た時に置いていった帽子を身に着けている。私の家に置きすぎて彼の匂いはしなくても、彼が近くにいる感じは確かにした。
今日は年に1回か2回あるかないかの、本当に最悪な日だった。その時はただただ呆れて、苛立ちが込み上げてきたけど
今になるとよくあの時耐えていたなと思う。以前外部委託で依頼を受けていた楽曲制作の完成したデモ候補5曲を
アーティストさんに直接渡した時のことだ。
__歌手「もっとこ〜、う〜ん……いい曲って言ったら言い方悪いんですけど、印象に残るような曲にして欲しいです。
自分にいい曲を書きたいのは分かりますけど、こっちだってお金払ってるんですから。(笑)」
__「候補全て、ダメだったということでしょうか」
__歌手「ダメって言うか……ねぇ?」
__「来週までに再度提出させていただきます。」
思い出しただけでイライラした。この寒さも相まって余計だ。信号は全て赤いしタクシーは捕まらないし、アプリで呼んでも混雑中で中々来てくれないし。
自分的にはすごくいい曲だと思っていたからこそショックだった。あんな横柄な態度を取られて怒らない人なんていないと思う。界人くんならどうしてたんだろう。
自由な時間を削ってまで書いた曲を粗末に扱われて、相当ストレスが溜まっていた私は、界人くんに「家行く」と前触れもなく文章を送り付けコンビニに寄った。
「レジ袋もお願いします」
[かしこまりました、おしぼりもお付けしますね。]
丁寧に袋に詰めてくれた。気を使ってくれているのか、缶の量的に気を利かせてくれたのかおしぼりも多めに入れてくれている。
彼が家に帰っているかどうかも分からないのに、打ちのめされた時に会いたくなるくらいには好きなんだなと自覚するもなんだか恥ずかしい。
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(名前)(プロフ) - はじめまして。コメント失礼いたします。Twitterにてパスワードを記載していただいてるとのことですが、Twitterの垢がわかりません。教えて頂くことは可能でしょうか? (3月24日 21時) (レス) id: c73f4a9637 (このIDを非表示/違反報告)
にむ(プロフ) - しーさん» 気づくの遅れてすみません🙇🏻♀️Twitterの固ツイにパスワード貼ってるので良かったら🙇🏻♀️ (2月25日 21時) (レス) id: d177642b92 (このIDを非表示/違反報告)
しー(プロフ) - こんばんは、コメント失礼致します。他の作品もぜひ読ませて頂きたいのですが、パスワードをお伺いすることはできますでしょうか、、。 (2月5日 22時) (レス) id: e0d56893a0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:にむ | 作成日時:2023年12月29日 23時