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「 俺は可愛いと思ったけどね、朝の 」
「 ねえそれまだ言う？(笑)」
「 いや実際気にしてたべ？ 」
北斗もひでえよなあ、と眉を下げて笑う樹くん
未だ樹くんの前では前髪を押さえている手に樹くんのごつごつとした男らしい手が重なって、
見せてみ？なんて優しい表情を浮かべてる。
どんな姿もかっこいい、私の王子様みたいな
だけど樹くんはみんなにこんな感じで優しいから、
自惚れちゃいけないって分かってるつもりなんだけど。
どうしてもこの柔らかい笑顔を見ると、つい。
「 ほら何もおかしくないって 」
「 いやおかしいって！樹くん離して、やっぱむり 」
「 だーめ、前髪気にして俺との話集中出来ないでしょ 」
前髪に負けちゃうのは御免だわ、って負ける訳ないのにね。
樹くんとは最寄りまで一緒だから時々こうやって、時間が合えば一緒に帰るわけなんだけど。
電車も最寄り駅の一つ前、あともう少しで着いちゃう。
「 てかさあ、なんで俺樹くんなの 」
「 え？ 」
「 北斗は北斗なのに、なんで俺は樹くん？ 」
俺も呼び捨てされたいなー、ってニヤニヤしながら手を離して言うから慌てて前髪に手を戻す。
樹くんに関してはこんなに仲良くなったのも大学入ってからだし、あんな人気者に気安く呼び捨てできない。
「 無理だよ！樹くんは樹くんだもん 」
「 なんだそれ、俺も樹って呼ばれたいし！ 」
「 やだ！樹くんなの 」
「 ねえ、呼んでよA 」
A、と呼び捨てされてまた胸の鼓動が高鳴る。
目の前には樹くん、気付けば肩を両手で掴まれてて
え？これどういう状況よ。
「 じゅ、じゅり…？ 」
身体が近付いているような気がして焦りを感じる
気付けば相手の名前を口にしていた。
名前を呼ぶと少し真剣そうな表情がふにゃっと緩んで
「 うわー、やべえなこれ 」
「 もうなんなの！ 」
「 あーごめ、いや、なんでもねえ 」
口元を抑えてあからさまにニヤニヤしてるから
本当に思わせぶりな態度が得意なんだなあ、と。
ほら、その表情も。女の子に囲まれてる時と同じ。
…なんかヤダなあ。私だけに見せてくれたらいいのに。
モヤモヤとした思考は戻らないまま、お別れ。
なんか帰る気にもなれないし、北斗が来るまで待ってるか。
「 んじゃあね、私ちょっと用事あるからここで 」
「 ん、おっけー。また明日ね、ばいばい 」
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作者名：ぴあまる | 作成日時：2020年8月12日 4時
