わたしの声を聞いて【斑鳩三角】 (ページ5)

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無地の灰色のポロシャツの上に着た、たくさんのポケットとボタンがついているデザインのデニムのオーバーオール。
そこには一つもさんかくが見当たらない。
どこからともなく目ざとく見つけてくる三角なら、さんかくの形になっている留具のついたオーバーオールやさんかくがプリントされたポロシャツを着ているのに、探しても探しても、どこにもない。

「さんかく〜？さんかくなら、ここにあるよ」

三角はそう言って、胸元のさんかくペンダントを指差した。

すぐさまペンダントを指差した三角に違和感を感じて、耳たぶに目線を移すと公演中すら外さないさんかくノイヤーカフがついていなかった。
代わりに、頭に幾何学模様のカラフルなバンダナが巻かれ、襟足は大雑把に括られている。

⸺なんか、違う

突きつけられる三角の姿に、違和感を感じる。
まるで別人になったように感じるのだ。
今まで豹変して別人に憑依したように演技をする三角を見てきたはずなのに、それとは何かが違う。
人は変わってない。
斑鳩三角という人物は、何一つ変わっていない。

常に汚れがなしの天真爛漫さ。
時間が空いたら古今東西さんかくを追い求めて、ふらふらふらふらと出かけていく姿は、遊ぶことを覚えた小学生のように見える。
ときに猫と追いかけっ子をして草むらへ突っ込んだり、木に登って葉っぱを頭に乗っけたまま寮に帰ってきたりするでかい小学生にデートなんて言う行為は似合わないはずだった。

「なんか、三角さん大人っぽいなぁ」

そう、まさに今椋が呟いた一言が、幸の持つ違和感にピッタリと当てはまった。
本人が変わってしまったんじゃない。
演技をしている訳でもなく、人格が変わってわけでもない。
ただ、三角の見えていなかった部分が表面に現れただけなんだと悟った。