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「…彼女とかではないのか」
天馬の問いかけに空く間。
幸からは見えないが、三角は少し俯いた。
その様子を見て、天馬が少し慌てたように視線を彷徨わせている。
「……違うよ。オレときのは恋人じゃない」
「じゃあなんで二人で出掛けるんだ?」
「きのに会いたいから…」
三角が天馬に向けた表情は、幸が見たこともないくらい三角の温かな表情だった。
いつものあどけなさは何処へ行ってしまったのだろう。
演技をするときよりも自然で顕著な表情の移り変わりだ。
「そうか。なら、今日は思いっきり楽しまないとな」
「そうだね」
天馬はそんな三角を見て鼓舞するように笑った。
少しの彷徨いもなく、あっさりと。
幸の見立てではもっと戸惑うかと思っていたのに、以外だった。
普段から幸にポンコツだと言われまくっている天馬にも、ポンコツでは無い一面があるようだ。
幸の眉間は少し寄っていて不満がありそうだった。
立ち上がるときに、ずっと座っていたせいかふらつく。
踏みとどまりこけることはなかった。
壁際に置いていたペットボトルを取ろうと、腕を伸ばすが指が触れるだけで倒れてしまう。
もう一度、掴もうとするがまたもや手から滑り逃げてしまった。
⸺俺が一番混乱してるじゃん……
認めたら癪なので認めたくないが、幸は明らかに三角の雰囲気に混乱していた。
その場にしゃがみ込み、ペットボトルをきちんと掴んだ。
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作者名:春秋るる | 作成日時:2023年9月15日 20時