その顔、大嫌い【宮侑】

しかめっ面 ページ29

風呂から上がって携帯を見る。携帯に不在着信。誰かと思ってみれば治からだった。俺は治に電話をかけ直す。するとすぐ出た。


『お前なんで出ないんよ』


治は少しキレ気味で言う。


「風呂はいってた。」


『母ちゃんがキレとる。彼女泣かしたらぶっ飛ばすって』


「なんで知ってるん？！」


『予感がしたらしい』


「母ちゃん怖っ」


昔から俺の母ちゃんは元気いっぱいで明るくて鬼みたいに怖い。他人でも誰でも大事にする人で、とにかく勘が鋭くて誰からも信頼されてる。


『最近元気ないみたいやからって母ちゃん言っとった』


この前実家に1度全員集まった時に気づいたのだろう。


『別にその話したくて電話したわけやないけど』


「なんなん？！」


話は続く。少し真面目な話になった。


『俺な、Aさんのこと好きなんよ』


「へえ、は？」


治の口調は本気やった。いつもならおちゃらけてる癖にほんまに好き、見たいな言い方しよるからこっちも焦る。でも、事実やったら。


『お前Aさん手放したらどうなるか分かってるやろな』


電話越しで笑う治に冷たく返す。


「もう、別れた」


しん、と静まる部屋。


『ほんま？』


「ほんま。嬉しいやろ」


俺がそういうと治は電話を切った。あいつ何したかったん？ほんま謎。メールで謝れ、と書かれたメールを寄越した治。謝って済むならええけどな、A許してくれんもん。絶対。









俺は後悔することを知らない。

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