執行官ノ哀哭【PSYCHO-PASS】

20：矛先は常にこちら ページ22

今回の害者は、葉山公彦という無職の男らしい。なんでもコミュフィールドがどうたらこうたら、らしい。分からない。全く分からない。


「そんな訳で。ウチの可愛い鑑識ドローンが頑張った結果、葉山さん家(ち)の排水溝からは、めでたく遺体の断片が見つかりました」


はい拍手、と分析の女神・唐之森志恩さんが言ったから。素直にパチパチと手を叩いたら宜野座さんに睨まれた。なんでだろう。


「なのに、誰かがネット上で葉山のコミュフィールドを運営し、葉山のアバターで彷徨き回ってる、と」


コミュフィールドとは。アバターとは。ああ分からないからつまらない。あとで慎也さんに訊こ。


「怪談だね。成仏できずにネットを彷徨う幽霊、ってか？」

「誰かが成り変わってるのか？」

「どォだかね。葉山は失踪する以前から、ふざけ半分で偽装IPを使ってたみたい」

「アクセスルートの追跡は？」

「こういうタイプの人間は、逆探知対策もバッチリなのでは？」

「何？」


いや怖い。なんでそんな喧嘩腰で訊いてきたの。本当宜野座さんって私にキツイよね。悲しいなあ。


「試してみるのはアリだと思いますけど。勘付かれる可能性は否めない。ま、これはあくまで私個人の意見ですから。聞き流して頂いても結構ですよ」


宜野座さんにそう笑いかけるも、フンと鼻を鳴らして睨まれる始末。言ってはいけない事を言ったつもりはないんだけど。気にしないでおこう。うん。

志恩さんはそうね、でもさ、と言葉を続けた。


「少なくとも葉山のアバターを使ってる奴は、自分が怪しまれているだなんて、まだ気付いてないハズ。それってチャンスなんじゃない？」

「ある意味、今回の容疑者は逃げも隠れもせずに、目の前をほっつき歩いている訳だ」

「上手く誘導すれば、正体の手掛かりになるようなボロを出すかもしれない」

「奴のアバターに接触してみよう」

「手としちゃ悪くないが、誰がやる？レイか？」

「私がこういうのに疎いって分かってて言いましたね？」


征陸さんはご名答だな、とニカッと笑った。冗談じゃない。こんな面倒なこと誰がするもんか。


「口に出てるぞ、美護」

「すいません正直で」

「冷泉。後で少し話がある」

「宜野座さん本当勘弁してください」

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