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「ただいま、」
今日は、母が仕事の日。
つまりはいつもよりも自由と言うことだ。
手洗いを済ませてそそくさとスマホのもとへ行く。
スカートのポケットから折り畳んだ紙を取りだして1桁1桁確認しながらダイヤルに打ち込んでいく。
────よし。
微かに震える指先で緑のコールボタンをタップする。
ぷるる、という呼び出し音が耳元からする。
はっきり言ってこの音は嫌いだ。
クイズ番組でよくある、正解かどうかためられる時のようにドキドキしてしまう。
3コール目で、呼び出し音が止まった。
「もしもし、琴枝です。」
そう言いきって相手が口を開くのを待っていた。
また、あの声が聞けるのだろうと信じて疑わなかった。
────それなのに。
「はい、ご要件をお伺いします。」
スマホのスピーカー部分からは、女性の声がした。
「あの、鬼舞辻さんに代わって頂くことは可能ですか…?」
「…そのような社員は弊社にはおりません。」
───お引き取り願います。
なんで?なんで?疑問がぐるぐると駆け巡る。
けれど床に座り込んで息を吐き出すと、あそうか、遊ばれていたんだ。
そうやって腑に落ちてしまった。
運命的な出会いを装って、女子高生を弄んでいたんだ。
悲しみがなんだか怒りへと変わってきた。
「もおおお!絶対にあいつを見つけて仕返ししてやるんだからあああああ!!」
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作者名:白桃。 | 作成日時:2020年1月31日 22時