能面少女と神父さま。 (ページ7)

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教会を出てから30分ほど歩く。

いつもよりかなり遅いペースで歩いているので宿にはまだ着きそうになかった。

「そういえば、さっきの『俺が聖職者と関わるとー』ってやつ、どういう意味？」

「ん？あー……あれは……まぁ。っていうかさ、俺の話より君の話をしようよ。俺お嬢さんのこと気に入っちゃった」

話を逸らされた、というのは察したが、深追いするほど私も野暮じゃない。

私の話もあまり面白いものではないが、このまま黙って気まずくなるよりはましだろう。

「私、この先にある孤児院で育ったの。決していい所っては言えないけど」

チラリとみぞれ口を見ると、『oh...』という顔をしていた。

筋肉痛が痛むようで、私の肩に腕を回している。

「孤児院には仲いい人とかもいないから、あんまり楽しくなくて」

「なるほど……」

興味深そうにみぞれ口は相槌を打つ。

『oh...』という表情は崩していない。

「楽しいことも嬉しいこともそんなになかったから、気づいたら表情筋が死んでたの」

「たしかに君あんまり表情変わんないよね。ちょっと笑ってみて。ほら、ニコッて」

うわぁ、無茶振りだなぁ、と思いながらも自分にできる精一杯の笑顔を彼に向けた。

みぞれ口は一瞬固まってから、苦笑いをする。

「……そんなにひどいかな？」

「……かなり」

笑う練習でもしようかな、と私は密かに思った。