Symphony8【病系】【短編集】

. ページ43

.

桃side









「 莉犬、？ジェルくん呼ぶ？ 」

「 ……ン、…っはｯﾊｧ、いい…よば、ンﾝないで、 」



最近、莉犬の体調が優れないのは周知の事実で


検査の日以降、莉犬の様子が少しおかしいのにも気づいていて




けれど、俺はなんて声をかければいいか迷っている






今だって、苦しそうに胸を押えて肩で息をしているというのに一向にジェルを呼ぼうとしない



そりゃ些細なことでジェルを呼ぶのはやりすぎだとは思うけど、最近の莉犬はそうじゃなくて


ジェルに苦しんでる姿を見せたくない様にも見える






.






「 あぁ〜わっかんねぇ、 」

「 どうしたのさとちゃん、勉強なんかしちゃって 」


少し落ち着いたのか、莉犬がベッドから身を乗り出す様に俺に聞いてくる




「 宿題だよ… 」

「 宿題？出てたっけ？ 」

「 いや、院内学級のじゃなくて学校の… 」

「 学校の宿題！？さとちゃん退院するの？ 」


莉犬のその通る声にころるぅとも反応した




「 ハハw ちげーよ。言わせんなw
これ出さないと卒業できねーんだって 」

「 へぇ、さとちゃん3年生だもんね 」

「 そうそう。学校になんの未練もないけどちゃんと卒業しないと俺小卒になっちゃうから 」



「なんだそういうことか」と安心した様子で、ゲームの続きを始めたころるぅと

と、まだまだ俺に興味津々な莉犬





「 そっか〜。…俺は小学校卒業できんのかな、w 」

「 まだ考えるの早いだろ 」

「 、そうだよねw 」



なんだろうか


莉犬のひとつひとつの言動が気になるのは



未来の話をする度に、莉犬は自分はそこに居ないかのような反応をしてくる





この違和感をきっと突き止めないといけないのに


俺はこの違和感の正体に薄々勘づいた上で聞けないんだ







俺はちっぽけな男だから



自分が傷つくのが怖いんだ






.

.→←108_ちっぽけep.5-2［赤×all］

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す