Symphony8【病系】【短編集】

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桃side










彼の赤が付いた手はずっと震えている


病院に担ぎ込まれたあいつを俺は椅子に座って待つだけ



深呼吸を何度もして、震える手を強く握って「大丈夫」と唱え続ける




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目を瞑ると思い出す光景




横断歩道の途中で突然立ち止まった莉犬

その背後からかなりなスピードで走ってきた無点灯の車

気がつくのが遅くなって、声を荒らげた瞬間には…






「 …まじで、、頼む…、 」


運ばれる時莉犬はもう意識がなくて、今［手術中］と光っているその厚い壁の向こうで何が起きているのかは分からない

夜遅い病院でひとり。俺は、祈ることしか出来ない







＿








「 頭を強く打っており、いつ目覚めるかは分かりません 」


真夜中、何時間も処置を続けてくれていた医者が言った




ふざけんなよ

そんな言葉をこの医者にぶつけたところで何も変わらないのは分かってるからグッとこらえる


その後警察の事情聴取を受けて、莉犬の元に行けたのは明朝だった









寝ていないとか、今日も仕事だとかそんなのどうだっていい


大きな機械を付けて包帯が巻かれ眠っている莉犬のその姿を見て、その場に立ち尽くす




ピッピッと彼につけられている機械が規則正しく音を出している

それをずっと見ていたら、彼が生きてるって実感出来て、気がついたら莉犬の手を握っていた







「 …ばかやろう、 」


医者によると、貧血の症状も見受けられたからそれで立ち止まってしまっていたんじゃないかって

限界超える前に、なんて言ったけど気づいてすぐ守ってあげればよかった







暖かいその手。俺がどれだけ強く握っても、握り返してくれることは無い




「 俺の…俺たちの夢、まだ叶ってねーぞ…！ 」


世間では俺は冷静沈着、クールなお兄さんみたいなイメージを持たれててそんなキャラクターとしているが

実際の俺はそんなことない。

俺は泣き虫だし、弱虫だし、考えすぎちゃうし。そんな俺を笑って背中を押してくれてたのが莉犬なんだから

俺にはお前が必要なんだから







ボロボロと零れ落ちる俺の涙を拭ってくれる人は居ない






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