クリームソーダ【水】 ページ13
.
main)水 / sub)夢主・橙 / 非リアル設定
＿＿＿＿＿
カランコロンと使い古されたような重たい音色が鳴るドアを開ける
少しのテーブルとカウンター席のみのレトロモダンな小さな純喫茶
外に出ている看板の名前部分は剥げ、店の名前は分からない
そんな、趣深い喫茶店が僕の憩いの場だ
カウンター席の端の方
ぽつんと空いていた場所に座り、白ひげを蓄えたお爺さんにいつものメニューを頼む
『 クリームソーダください 』
「 あいよ 」
辺りを見渡すと、沢山の人がいるのがよく分かる
一件なんの統一性もないように見える人々が本当はある共通点を持ってこの店にいる
手首に白のネームバンドをつけている
又は、この店の向かいにある薬局の袋を持っている
僕は、後者
.
そう、この喫茶店の目の前には大きな大学病院が立っていてここに来る人のほとんどがその病院で何らかのお世話になっている人たち
僕も例外じゃない
検査や治療で病院を訪れた後は必ずと言っていいほどこの喫茶店に寄るようにしている
クリームソーダは、僕にとってはご褒美なんだ
「 お待たせしました、クリームソーダです 」
コースターと、その上に置かれたクリームソーダ
緑色の海の中に、炭酸の粒が泳いでいる
堂々と乗せられているバニラアイスと、その上のチェリー
今週も僕は生き抜いたんだとここで実感するんだ
ストローで1口飲むと、炭酸がしゅわっと弾ける
ソーダの中に溶け込んだアイスをスプーンで掬い口に運ぶ
言葉にはし難い幸福感が僕を包んだ
.
カランコロンとまた音を鳴らし、店に入ってきた女性が目に入った
長い黒髪に、ニット帽、ロングカーディガンを羽織ったその女性は僕のすぐ近くに座りマスターと笑顔でお話している
「 また抜け出してきたのかい？ 」
「 内緒ですよ？ 」
なんて会話が耳に入ってきて、思わず聞き耳を立ててしまう
多分だけど、彼女はあの病院に入院をしていてたまにこうしてこの喫茶店に来るみたいだ
なんて、炭酸が抜けてしまうことも厭わずストローをマドラーのようにクルクル混ぜながら聞いていると
ぱっと、彼女がこちらを見て目が合った
あまりの綺麗さに僕は目が離せなかった
これが、僕と貴方との出会い＿＿＿＿
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 90人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
らふのすけ(プロフ) - ツキさん» コメントありがとうございます！凄く嬉しいお言葉有難いです☺️ (2022年11月14日 14時) (
レス) id: 75a74ec2d8 (このIDを非表示/違反報告)
らふのすけ(プロフ) - みずきさん» コメントありがとうございます！これからも頑張ります💪🏻 (2022年11月14日 14時) (レス) id: 75a74ec2d8 (このIDを非表示/違反報告)
ツキ - 最後の話、凄く感動しました！元々、病系は苦手で、読み終わった後、凄く悲しい気持ちになるのですが、この話を読んだ後は、良い話だったなって思えました！こう思ったのは初めてです！ありがとうございました！ (2022年11月11日 18時) (レス) @page26 id: f52078334a (このIDを非表示/違反報告)
みずき - 初コメ失礼します！めっちゃこの話どタイプです！がんばってください！ (2022年11月4日 19時) (レス) @page25 id: e41f8fb311 (このIDを非表示/違反報告)
らふのすけ(プロフ) - あさん» お待たせしました！時間をかけてじっくり書いたお話なのでぜひ読んで頂ければ嬉しいです😌 (2022年11月4日 16時) (レス) id: 75a74ec2d8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：らふのすけ | 作成日時：2022年9月21日 2時
