ほっとらて【短編集】

アンズ【桃】 ページ34

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『 ＿お前ら、何やってんだよ 』


それは、間違いなく救世主の登場




私に罵詈雑言を吐き、痛めつけていた人間たちが「…ッ」と声にならない程の驚きを見せて動きを止める








「 …さ、とみくん……！ 」

『 お前、こんな狡(こす)いことやる奴だったんだ…w 』



彼の登場に思わず後ずさりする、私を今さっきまで虐めていた人達は一瞬にして目を恐怖の色に染め、壁際まで追い詰められていた


反対に、目に光を灯したまま一歩さらに一歩と近づいてきて暗がりからようやく顔の見える場所まで来た彼はイジメの加害者数人と被害者の私を見て「フッ」と蔑むように笑った






「 違う、違うの…、さとみくん！ 」

『 何が？虐めてたんじゃなくて戯れてただけですってか？ 』


イジメの主犯格が、やけに焦った様子で必死に御託を並べている






＿ああ、そうだ。
この人、さとみくんのことが好きって有名だった



クラスという社会からはみ出し、暗がりで生きる私でも知っているくらい周知の事実

そんな女が自分の最も見られたくない部分を最も好きな相手に見られたんだ

この焦り様は間違っていない






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なんて、謎の分析をしている間にイジメっ子達は走って逃げていった





『 大丈夫？立てる？ 』


それは間違いなく私に差し伸べられた手

水に濡れ、靴で蹴られ汚れた同じクラスなのに喋ったこともないこんな私に向けられた細くて綺麗な手





「 …大丈夫です、ありがとうございます 」


こんな汚い体で、彼に触れることなんて出来ない

そう判断して自分一人で立ち上がって制服をパンパンとはたいた










『 結構前からこんなことされてるの？ 』


彼は使って貰えなかったその手を引っ込めて問うた




「 慣れてるんで…心配いらないです 」


そうだ、慣れているんだ

こんな仕打ちは






ずっとはみ出しもの私はたまに、…いや、良くいじめの対象になっていた


先生に相談もした、親にも相談した

けど、何ひとつ状況が変わることは無かった


だからもう、ただいじめの矢が私に降り注がないように

もし降り注いだ時は、その矢が他の方向を向くまでひたすら耐えた



これが、私の生き方

ひとりぼっちの臆病者の私の生き方＿＿＿＿








『 いや、心配だろ。馬鹿かお前 』

「 ＿＿＿＿え？ 」



この出会いは正解でしたか？




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