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三反田君は猪名寺君と私を残し、その場からいなくなってしまった。
猪名寺君はまだ泣いている。
私は猪名寺君に声をかけた。
「猪名寺君、大丈夫?」
「どうしよっ・・・数馬先輩に嫌われたっ・・・!」
先程よりも更に泣き出してしまう猪名寺君。
私は彼を落ち着かせようと、彼の背中をさすった。
「大丈夫だよ。三反田君は君を嫌ったりしない。ちゃんと謝れば許してくれる。」
「で、でも、あんなに怒る数馬先輩、初めて見たっ・・・!」
「そりゃあ人間だもの。どんなに優しい人間だって、怒る時は怒る。ねぇ、一緒に三反田君に謝りに行こうよ。」
「一緒に・・・?」
「うん。それから善法寺君ともお話しようか。」
「伊作、先輩と・・・」
私は猪名寺君の手を繋ぎ、医務室へと向かった。
猪名寺君は緊張しているのか医務室に着くまで、終始何も喋らなかった。
医務室の一歩手前まで来た時、医務室の中から善法寺君と三反田君の話し声が聞こえた。
「僕、ついカッとなって乱太郎を怒鳴ってしまいました。きっと乱太郎、僕のこと嫌いになりましたよね・・・。」
「そんなことないよ。乱太郎が数馬を嫌うなんてありえない。まあ僕はもう嫌われちゃってるけど・・・。」
二人の声色から、相当落ち込んでいることが分かる。
「どうする、猪名寺君?」
「私・・・行ってきますっ・・・!」
「うん、頑張って。」
猪名寺君は決意したように、医務室へ入っていった。
それから少ししてからのこと。
医務室の中から、三人の泣き声が聞こえてきた。
どうやら仲直りは成功したみたい。
私は静かにその場を立ち去った。
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作者名:ずみ | 作成日時:2019年11月2日 17時