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「庄ちゃん、どうしたの?」
「えっ、何が?」
「なんだか最近、ずっとボーッとしてるよ?何かあったの?僕でよければ相談に乗るよ!」
「伊助・・・ありがとう。ちょっと宿題で分からないところがあっただけだから。」
駄目だ。
集中しないと……。
僕は最近、ずっと夢の中に出てくる女の人が気になって伊助が言う通り、ボーッとすることが多くなった。
ぼんやりとしか姿が見えない彼女。
せめて顔がはっきりとすれば……。
「ん?庄ちゃん、何か落ちたよ?」
「えっ?」
伊助が指さす方に目をやると、半分に折りたたまれた小さな紙が落ちていた。
忍たまの友に何か挟まっていたのだろうか?
僕はそれを拾い、折りたたまれた紙を開いた。
開くとそこには、一輪の花が挟まれていた。
僕はいつこんなものを忍たまの友に挟んだだろうか?
全く身に覚えがない。
「庄ちゃん、花なんて好きだったっけ?」
「嫌いじゃないけど、特別好きってこともないかな・・・。」
「花って僕たち男よりも女の子の方が好きそうだよね。」
「確かに。」
「ねぇ、庄ちゃん。その花、なんて名前なの?」
「これはシオンと言って・・・シオン・・・?」
「どうしたの、庄ちゃん?」
なんだろう…何かが引っかかる……。
どうして僕はこの花を持っていたんだ?
しかもいつから持っていたのかも分からないのに、この花は枯れていない。まるで今さっき、積んできたような……それほど綺麗な状態なのだ。
「あっ、土井先生!」
「どうした、伊助?」
「庄左ヱ門が変なんです。さっきからずっと動かなくて・・・」
「えぇ?庄左ヱ門、どうかしたのか?」
「土井先生、この花の花言葉を知っていますか?」
「この花?あぁ、シオンか。確か花言葉は“追憶”、“遠方にある人を思う”、それから“君を忘れない”だったかな。それにしてもよくシオンを見つけたな。今は時期じゃないのに。って、庄左ヱ門どうして泣いているんだ!?」
「庄ちゃん、どこか痛いの!?」
「大丈夫か、庄左ヱ門?」
気づくと僕は泣いていた。
あぁ、思い出した……。
どうして僕はあんなにも想っていた人のことを、今までずっと忘れていたんだろう?
何度繰り返したかも分からない。
やっと僕は貴方のことを思い出した。
全部、全部思い出した。
貴方がもうこの世界にいないことも。
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作者名:ずみ | 作成日時:2019年11月2日 17時