青い春、袂を分かつ少女 (ページ1)

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本能が狂い始めるページ1

寂れた街、ドがつくほど田舎の中で。海の見える小さな駅だけが唯一私の好きな場所だった。

真夏の昼下がり。校庭に生い茂る枝垂れ桜の木の下、私は彼女と2人きりだ。

教室は嫌い、皆が私を蔑んで嗤うから。
家は嫌い、誰も私を見てくれないから。

今日も逃げてきた私、彼女は何も言わず傍にいてくれた。
雄弁な沈黙、私達は話さずとも安らぎを覚えている。
そんな中、彼女は口を開くと私に尋ねた。

「ハツカネズミって知ってる?」

「...急にどうしたの?」

分からない、と静かに首を振る私を慈しむ様に撫でる君。桜の葉で陰った君の、その顔が歪んでいると思った刹那。私は絶望に堕とされた。

走り去る私、君はきっと何かを言っていたんだと思う。それすら届かない程に、私は1つの思想に支配されていた。

ーもう疲れたの。何もかも、君からさえも逃げ出したい。

知りたい、生きたい、仲間が欲しい。そんな本能が悲鳴をあげているのも関わらず、私は前へと進んでいく。

そもそも狂っていたのは私。そんな事とっくに分かっていたのに、私は目を逸らし続けた。

君がいないと、私は私で無くなっちゃうから。
家にも、学校にも、世界にも。私には君しかいなかったのに。君を疑った私は、もう存在していないに等しい。

絶妙なバランスの中で成り立っていた。風が吹いてしまえば容易く崩れる様な中で生きてきた私に、その自覚は全ての意義と成すに十分すぎたのだ。

波の音、蝉の声、徐々に近づく警笛。何もかもが私の存在の小ささを引き立たせている。深淵が私を呼んでいる。

その存在達に惹かれるように、私は踏切へと飛び出した。