貴方の名前で私を呼ばないで (ページ4)

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ペンローズの階段【ALL】ページ4

オリジナル魔物に遭遇する話。
時系列的にはファリン蘇生後、イヅツミ加入前くらいです。

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違和感を覚え始めたのは、全く同じ景色の階段を降り続けて約一時間が経過した頃だった。

「ねっ、ねえ、階段、やけに長くない…？」
「これは…ひょっとするとあれかもな」

試しに壁にナイフで特徴的な三角形の跡を付けてもう一度階段を降ってみたところ、数分もしないうちにその跡が再度出現し、ああやっぱりかとみんなでその場に崩れ落ちる。

「これは、あれだな。階を移動する途中でごく稀に遭遇するやつ」
「ああ、あれか…あーくそっ」
「こんな最悪なタイミングで遭遇するとはね」
「え、え、"あれ"って？」
「マルシルはペンローズの罠にかかるの、初めて？」

どういう状況か掴めていないらしいマルシルをとりあえず階段に座らせ、諦めモードで荷解きを始めた。チルチャックとセンシも同様だ。「えっ、えっ、でも先を急ぐんじゃ」と更に困惑した様子のマルシル。ペンローズ自体珍しい魔物なので、歴の短い彼女が存在すら知らなくても不思議ではない。

「ペンローズは幻術を使う魔物でね。予め筒状の階段や噴水の周りなんかに潜んで、そこを通った冒険者に魔法で幻覚を見せ同じところをグルグル歩かせ続けて疲弊しきった所を襲って食べる習性があるんだ」
「マルシル、気をつけろ。ペンローズは目が見えない分鼻がいい。お前みたいに身嗜みに気をつけていい匂いさせてるやつほど真っ先に喰われる」
「普段は滅多に遭遇しない魔物なんだけどねー、運が悪いなあ」
「いや、ペンローズはドラゴンと同じで普段は休眠して飢餓状態の時だけ狩りをする魔物なんだ。遭遇自体はそこそこしているよ。襲われていないだけだ」
「となると、このタイミングで襲われたのは俺たちが通るのを見越した狂乱の罠か？」
「その可能性はある」

余談だけれど、ペンローズという名前はこの魔物を発見した学者の名前から取られたんだってさ。しかし、魔術師に振り回される魔物くんも可愛そうに。相手が魔物とはいえ虐待も甚だしいな。

「参ったな。わしの経験上、こいつに引っかかると平均3日は時間を取られる」
「ええっ！？そんな時間ないよ！どうにか出られないの？こう、壁とか壊しまくったりしてさ」
「壁や床を傷付けても意味は無いよ。それどころかペンローズの思うつぼだ、本体は俺たちが疲弊した所を襲おうとどこかから今も虎視眈々と様子を伺ってるんだから」