第324話 ページ35
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「‥‥‥さて、どうするかね」
Aから借りた小型装置を、軽く投げ上げ、受け止め、を繰り返す。
視線を向けた先にあるのは、────巨大な箱型の建物。
「‥‥‥“ボーダー”、か」
組織名であろうその綴りを読み、辺りを見回す。
この辺りは所々崩れているが、それでも「向こう」に比べれば遥かに綺麗な町並みだ。
まぁ、「向こう」と比べること自体、基準がおかしいのだろうが。
しかし「町」と呼ぶのは少し違うか。
それにしては人気がなく、生活感はほとんどなかった。
「‥‥‥あ〜〜〜、どうやってあそこに入るんだ?」
ぐしゃぐしゃと髪を掻いた。
やって来たはいいものの、果たしてAが言っていた「迅」とやらはどこにいるのか。
“「迅悠一」、「百夜A」って言えば多分、
彼女はそう言っていたが、そもそもそれを言う相手が出てこなければ始まらない。
「‥‥っつーわけで、」
振り返り、「隠れてねーで出てこいよ」と呼び掛けてみる。
「!」
反応があったのはそいつらではなく、視界の隅。
光が瞬き、それは俺のところへ一直線にやって来る。
ひょい、と身体を逸らすと、さっきまで頭があったところを弾丸が通過し、地面にめり込む。
今度は かちゃり、と音がして後頭部に堅いものが押し付けられる。形からして銃口か。
少し首を動かし流し目で背後を見ると、無表情の男がいた。
視線を戻すと、10メートルほど先に槍を持った男が一人。
「おいおいおい、おっかねーな。ボーダーってのは人間相手でも容赦ねぇのか」
「‥‥貴様は、近界民か?」
「ネイバー? 何だそりゃ」
「‥‥、‥‥‥門を通ってきたのか?」
ゲート、という言葉には聞き覚えがある。
Aが俺に渡した機械は確か、ゲート発生装置、といったはずだ。
「───そうだな。そういうことになるか」
「そうか。なら死ね」
「何でそうなるんだよ」
「ボーダーや門は知ってるのに、近界民という呼び方は知らない。完全に黒だ。だから死ね」
「どういう論理だよ」
さらに殺気を強めるそいつに対し、目の前の槍男は「ちょっと落ち着けよ しゅうじ」と仲裁に入ったのだった。
めんどくさいことになりそうだ、とため息をついた。
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夏向(プロフ) - 朝陽さん» こちらこそありがとうございます‥‥!!! (2022年10月2日 23時) (レス) id: d3650b90b8 (このIDを非表示/違反報告)
朝陽(プロフ) - 続きめっちゃ楽しみにしてました!ありがとうございます! (2022年9月13日 23時) (レス) id: 2c0d85a97f (このIDを非表示/違反報告)
夏向(プロフ) - レモンはちみつさん» ありがとうございます!文章を褒めていただけると本当に嬉しくてすぐ調子乗ってしまいます(笑)気長に更新をお待ちいただけるとありがたいです…! (2022年9月13日 23時) (レス) @page49 id: d3650b90b8 (このIDを非表示/違反報告)
夏向(プロフ) - 仁奈さん» ありがとうございます!更新が本当に遅くて申し訳ないです…。気長にお待ちいただけるとありがたいです…! (2022年9月13日 23時) (レス) @page49 id: d3650b90b8 (このIDを非表示/違反報告)
レモンはちみつ(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです!一気読みしてしまいました。ワートリも終わセラも大好きなので嬉しいです!!書き方もすごく上手くて感情移入してしまいました、書き手として尊敬します!これからも頑張ってください!更新楽しみに待ってます! (2022年8月14日 22時) (レス) id: 95afc2042e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏向 | 作成日時:2018年4月2日 10時