第260話 ページ32
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べしゃ、と口から血が零れた。やっちゃったなぁ、と思いながら更衣室でぼんやり座りこんでいる。床を赤くするそれには《
実験後は薬のせいで身体が痛くて怠くて、頭痛が酷くて。身体を少しでも動かせばグラグラと視界が揺れた。そのせいで吐き気もあって、気分は本当に最悪だった。
身体を引きずるように更衣室まで戻っても、そこから数時間は動けない。だからこうして、この部屋の隅でじっと膝を抱えて耐える。
遠くから別の実験体の絶叫が聞こえて、耳を塞いだ。ひどく耳障りだ。何も聞きたくない。そう思っても掌から伝わる血流の音が絶え間なく聞こえて、それが心の底から邪魔だった。
鬼呪を全身に巡らせることで、気休め程度に症状が軽くなる。代謝が早まって薬の解毒が進むのだ。ズキズキと心拍に呼応するように痛んでいた頭が少しだけ楽になった。
不意にノック音が響いて、ぎぃ、と建付けの悪い扉が開く音がする。私は膝に額を押し当てたまま無視した。「A様」と呼ぶ女性研究員の声に、私は苛立ちを隠さずに応える。「その呼び方、やめて」
「では、何とお呼びすれば？」
「普通に被験体ナンバーで呼べばいいでしょう」
「ですがあなたは、柊の人間なので」
「‥‥本当にやめて。不愉快」
今は何もしたくない。誰とも話したくない。聞きたくない。頼むから放っておいて欲しかった。何の用でここへ来ているんだ、と殺意すら湧いた。
「‥‥戻ってきてくださって、ありがとうございます」
「それは何に対する感謝？ それとも皮肉？ 今すぐ消えて」
刺々しい声に、女性研究員は「失礼いたしました」と部屋から出て行った。
何が戻ってきてくださって、だ。昔は私に失敗だなんだと忌ま忌ましそうな顔をしていたくせに。柊真昼という優秀な実験台が死んで、シノアも軍からいなくなった。だから私が実験に参加して、「ありがとうございます」？
守るためにこの身体を差し出した。自分で決めた。それでも圧倒的な惨めさはあった。自分が得体の知れない「何か」に変貌していくことが、少しも怖くないと言ったら嘘になる。薬のせいで情緒不安定になるのだ。
そしてこの恐怖心を、鬼は喰う。だから、実験後は身体を乗っ取ろうとする鬼とも戦わなくてはならなかった。
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じゆんきむ(プロフ) - 返信ありがとうございます。楽しみに待ってます！ (1月11日 21時) (
レス) id: 3005c0f58d (このIDを非表示/違反報告)
夏向(プロフ) - じゆんきむさん» 返信遅くなりすみません。現在修正中なんですがリアルが忙しくて…。年度内には再公開できればと思っております (1月11日 2時) (レス) id: b371f4960f (このIDを非表示/違反報告)
じゆんきむ(プロフ) - 7個目の話はいつ公開されますか？？ (12月27日 1時) (レス) id: 3005c0f58d (このIDを非表示/違反報告)
雫鶴鳩 - ありがとうございます！！見捨てなんてしませんよ(笑)これからも更新頑張ってください！！ (2017年10月21日 17時) (レス) id: 86c88d0ffc (このIDを非表示/違反報告)
夏向@テスト期間は低浮上(プロフ) - 雫鶴鳩さん» (続き)読みにくいかと思われますが、今後はそのように解釈していただけると嬉しいです。これからもこの小説を見捨てないでいただけると大変ありがたいです！ (2017年10月21日 10時) (レス) id: 2e5a8262c2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夏向 | 作成日時：2017年10月10日 16時
