第248話 ページ20
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『姉さん』
『A、久しぶり』
姉は、時折孤児院に姿を現した。それは本当に気まぐれで、義理の両親が死に、実の両親だっていないに等しかった私には、唯一血の繋がった家族と話せる時間だった。
『急な引っ越しだったけど‥‥移転先の生活には、もう慣れた?』
『‥‥私は、前のところの方がすき』
すると突然、姉は私を抱き締めた。今までされたことのない接触に困惑する。姉は不意に『ごめんね』と言った。
『なんで姉さんが謝るの?』
『これからはもう、会えない』
『‥‥どうして?』
『会えないから、会えないの』
ただただ抱き締め、そう言った。
今日は12月23日。クリスマスまであと2日だった。世の中の人々は家族で集まり、きっと、もうすぐやって来る楽しいひとときを心待ちにしている。しかし私達は、そんなこととは真逆の意味をもつ抱擁をしている。
『‥‥なにか、あるの?』
『ええ。とてもひどいことがある』
『それは、なに?』
『言えない。言ったらあなたは、怖がるでしょう?』
『私は、なにも怖くないよ』
『いいえ。あなたはまだ子供だもの。だから、Aの知らないこともたくさんあるし、その中にはとても怖いものもあるのよ』
姉はいつも何を考えているのかわからなかった。今だって、頭を撫で、微笑み、立ち去ろうとするその心中を推し量ることはできない。だから、引き留めてしまった。
『姉さんは、それが怖くないの?』
『怖くないわ。‥‥いや、ちょっと怖いかな? でもね、仕方ないの。私は元々、そういう運命だから』
『なら、私もそうなんじゃないの?』
『違うわ。あなたは私とは違う。
‥‥そう思っていたけど、やっぱり、あなたは私みたいに、決められた運命の中にいるんだと思う。私は、私には、それを変えることはできなかった。力がないから』
『じゃあ、』
『それでも生きて。あなたは、こんな風になる必要はないもの。お願いだから、私みたいにならないでね』
ああそうだ、1つだけ、教えてあげる───
その後に紡がれた言葉は、まるでなにかのおとぎ話のようで。歌うように、姉は楽しそうに言った。その中にあった、「終わりのセラフ」という言葉はなぜか記憶に強く刻まれた。
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じゆんきむ(プロフ) - 返信ありがとうございます。楽しみに待ってます! (1月11日 21時) (レス) id: 3005c0f58d (このIDを非表示/違反報告)
夏向(プロフ) - じゆんきむさん» 返信遅くなりすみません。現在修正中なんですがリアルが忙しくて…。年度内には再公開できればと思っております (1月11日 2時) (レス) id: b371f4960f (このIDを非表示/違反報告)
じゆんきむ(プロフ) - 7個目の話はいつ公開されますか?? (12月27日 1時) (レス) id: 3005c0f58d (このIDを非表示/違反報告)
雫鶴鳩 - ありがとうございます!!見捨てなんてしませんよ(笑)これからも更新頑張ってください!! (2017年10月21日 17時) (レス) id: 86c88d0ffc (このIDを非表示/違反報告)
夏向@テスト期間は低浮上(プロフ) - 雫鶴鳩さん» (続き)読みにくいかと思われますが、今後はそのように解釈していただけると嬉しいです。これからもこの小説を見捨てないでいただけると大変ありがたいです! (2017年10月21日 10時) (レス) id: 2e5a8262c2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏向 | 作成日時:2017年10月10日 16時