第208話 ページ23
──────
おれたちが通されたのは、事務室のような部屋で、いくつか監視カメラもついていた。
『‥‥ここは危険なのでひとまずついてきてください』
そんな、有無を言わせぬ口調に従う他なかった。
どこか物々しい雰囲気が漂うこの世界が、百夜Aという人格を作ったのだと思うと納得してしまう自分がいた。こんな荒れた世界で生き抜くために、一体どれほどの苦労をしてきたのだろう。
各々が所在なさげに壁に凭れたりしゃがみ込んだりしていると、一人の男が入ってきた。その人は「おいおい何だこの状況」と呟く。その、自分達が知る人物とほとんど変わらぬ声に目を白黒させるおれ達に、Aは少し苦笑した。
「ちょっとのっぴきならない理由で連れてきた」
「何だそりゃ。おまえの知り合いか？」
「そんなところ。目撃者多すぎて誤魔化せそうになくて。言ったでしょ、私の隊 《柊家》直属だし監視員いるし嫌になるって」
「あー‥‥。暮人がうるせぇだろ、絶対」
「だろうね」
Aはため息と共にそうこぼす。
会話の内容はそれほど重いわけではないが、ジャージスタイルのおれ達と異なり「the·軍人」という格好の二人にいささかの威圧感は否めなかった。
「何でもいいけど俺を巻き込むなよ」
「この人たち用に部屋手配しておいてほしいんだけど」
「聞けよ。‥‥新宿はもう空いてる部屋ねぇからな」
「他に目星は？」
「牢屋か独房」
「却下」
「じゃあおまえの部屋」
「‥‥グレンしばらく野宿しない？」
「一人用で狭いからって俺の部屋使おうとすんな」
いつまでこうしてるんですかね僕達、と菊地原が内部通話で愚痴った。
はは、と歌川が苦笑し、でも先輩元気そうで良かったですと言う。そこは同意だった。
[どうなるかは百夜に任せるしかないだろう。どうも俺達は牢屋には入れられずに済みそうだ]
[運が良かったとしか言えないっすよね。Aじゃなかったらどうなってたか]
そこで、どうやらAと男の話し合いはまとまったらしく、一旦男におれ達を任せてAは出て行く。
彼は先程までとは打って変わり、おれ達を鋭い目で観察していたが、ややあってその鋭利さもなくなった。
·
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 119人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ワールドトリガー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夏向(プロフ) - るい酸性さん» 読み返していただきありがとうございます！6は現在改変中でして、土曜日中に全体公開する予定なのでもうしばらくお待ちください！ (2023年2月11日 0時) (
レス) id: b371f4960f (このIDを非表示/違反報告)
るい酸性(プロフ) - 久しぶりに読み返しました！6のパスワード教えて欲しいです！ (2023年2月10日 17時) (レス) @page49 id: 825df6404c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：夏向 | 作成日時：2017年9月7日 19時
