伝わらない?(及川徹) ページ45
休み時間、及川に教科書を借りに行った。
まさか数学の教科書を忘れるなんて思いもしないじゃん。
私数学は好きだし、担当教員は鬼みたいに怖いし。
『及川〜』
「あっ!A!」
及川は日々女の子に囲まれているが、私は別にどうでもよかった。だって及川が名前を呼び捨てするのは私だけだから。
「どうしたの……って、あぁ!待っててね!」
及川はこちらに来るなり、私が口を開く前に奥に戻っていってしまった。私まだ何も言ってないのに、そう思って少し待っていると、及川は数学の教科書を手に戻ってきた。
「はいこれ、頑張ってね!」
『ありがとう…』
及川と私の間には時折こういうことがある。
口を開かなくても伝わる、テレパシーのようなこと。
なぜかは分からないけれど、中学の時からそうだった。
『なんで分かったの?』
「ん?なんでだろ、Aの次の授業が数学なのを知ってたから?」
『でも教科書かは分からなくない?』
「まあ、俺Aのことは見てるだけで分かっちゃうんだよね☆」
及川はそう言って、ひらりと手を振り戻っていってしまった。
及川はずるいと思う。
私はずっと及川のことが好きで、及川を追いかけて青城まで来たのに、それが及川には1mmも伝わっていない。
みんなに優しい及川のことは大好きだけれど、私だけに優しくしてくれればいいのにとも思う。
私はそんなことを考えながら及川の教科書を抱きしめるように抱えた。
「お、おかえり〜。借りれた?」
『うん、及川から借りてきた』
隣の席の花巻に声をかけられ、私は席に座る。
教科書をペラペラとめくり、授業の範囲を確認する。
「お前らまだ付き合ってないの?」
『付き合えるわけないでしょ。私と及川じゃ月とすっぽん』
教科書を眺めながらそう答える。
花巻はふぅんと言いながら携帯を眺めていた。彼は私が及川のことを好きだと知っている。まあ協力してもらおうとは思わないが。
「…そんなことないかもよ」
花巻はそう言って携帯の画面を私に見せてきた。
そこには及川と花巻のトークルームが開かれており、現在進行形で連絡をとっているのが分かった。
【マッキー!】
【なんだよ】
【Aが教室に来たの!嬉しすぎてAが要件言う前に教科書貸しちゃった!】
【やば】
【Aのこと好きなのバレてないかな!?】
私は目を見開いてトークを見つめた。
「な?」
私はゆっくり頷いた。
思いが伝わるまでもう少し。
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まる - 泡姫さん» お時間かかっても全然構いません…!!むしろリクエスト叶えていただけるだけですごく嬉しいです…!続編をお気に入り登録しておきます…!!!!!! (2月18日 15時) (レス) id: 649d507a41 (このIDを非表示/違反報告)
泡姫(プロフ) - まるさん» わー!リクエストありがとうございます!久しく書いていないため少しお時間頂いてしまうかもしれませんが、私なりに書かせていただきます!!現在こちらの作品は続編の方を更新する形になっておりますので、よろしければそちらをお気に入り登録してお待ちください! (2月18日 12時) (レス) id: 5951de0be4 (このIDを非表示/違反報告)
まる - 作者さんにリクエストが…。銀.島.結.で過去の辛かったことを銀が全部包み込む…みたいなお話を書けたりしますでしょうか…?(語彙力なくてすみません…) (2月18日 11時) (レス) id: 649d507a41 (このIDを非表示/違反報告)
オレンジさん - 好きで愛してるわ作者さんじゃなくてさ、作者様じゃね?(は?何言ってやがるオレンジさんや) (2022年7月10日 21時) (レス) @page48 id: 0e3c42be20 (このIDを非表示/違反報告)
泡姫(プロフ) - 愛菜さん» そういう素直で分かりやすいお言葉が1番嬉しかったりします……今後も緩く書いていきますので時々キュンとしに来てください…!(ちなみに現在次話執筆中です…) (2021年11月6日 11時) (レス) id: 8284d2d1b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:泡姫 | 作成日時:2021年9月1日 21時