【d!】主役の虚言 (ページ3)

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早速ゲームを起動すると、目の前が真っ白になり目を細めるが痛いほどの光の刺激に耐えきれず思わず目を瞑った。

薄らと目を開くと、長閑な花畑に青々と茂る木々。噴水から流れる水の音が心地よく、右からの温もりが眠気を誘う。

ここは城内の中庭か何かなのだろう。まともに説明書は読んでいないが、中世ヨーロッパみたいな感じで軍事国家のなんか愛されてる主人公だったような…。

ちゃんと説明書読めば分かるか、とゴーグルを外そうとするがゴーグルが無い。一体どこに行ったんだ。

『え、ゴーグルが無いとしたら…これが現実…?え、まってまって？どういうこと？意味がわからない。』

訳が分からず混乱していると、右側に感じていた温もりの正体がモゾモゾと動き始めた為視線を右へとずらす。

『ｯｽｰｰｰ………落ち着け落ち着け落ち着け???私はA。ok大丈夫。隣は、んー？ゾムさん???嘘でしょ？』

zm「んーーなんやー?Aもう起きてもうたん？まだ寝てようや…」

『はい』

混乱する状況に更に追い討ちをかけるように肩に寄りかかる推しのゾム。死ぬど。

とりあえず、私は現実世界ではなく乙女ゲームの世界に入り込んでしまったということと…。推しが今隣にいるという現状が分かった。

なるほど、この乙女ゲームは最初から好感度が高い状態だからもう既に愛されてるけど私が彼らを愛することで更に好感度をぶち上げて楽しむゲームなのか。

これぞまさに人生イージーモード。自給自足なんて時代はもう古い。与えられてこそ愛ってものでしょう。

もう二度とつまらない現実世界なんて戻らない。私はこの世界で大好きな彼らと一緒に人生を歩んでゆくのだ。

私は現実世界のAを殺し、この乙女ゲーム世界でのAとして生きていくと決め。隣ですやすやと眠るゾムの頭を撫でた。

指の間を通る毛の感触が、この世界に生きていると実感でき、たまらない幸福感に包まれた。