32話 ページ33
「そら、さ……」
「ん?」
「わ、たし、きす、されたこと…」
「は、え、まじ?初めてだった?」
…コク。
そう、実は私ファーストキスなんです。この男に奪われた…ちくしょうイケメン恨めない。
「…あ、っと…ご、めん」
気まづい空気が流れ、そらるさんが"もう寝てろ"とその場を後にする。
…キスって、こんなのなんだ
そっと自分の唇に触れると、さっきのことが蘇ってくる。と同時に染まる頬。
「う、あああああ…」
布団にくるまると、ドアの方から"どうした!?"なんて慌てたまふくんの声。聞こえてたー…
「だいじょーぶ、なんでもないよ…」
「そう…?ならいいんだけど、体調良くなった?」
「ん、おかげさまでだいぶ。ありがとう。」
にこっと笑うまふくん。"それでね…"と切り出した彼の声はいつになく真剣で少し鼓動が早くなる。
「そのー、診察の結果なんだけどね?やっぱり、ストレスだった。」
予想はしていた。最近詰め込んでいたから。
「それでさ、体も疲れてるし、これ以上の無理は危険だって、先生が。」
「…え?」
.
「体力的な面でも、歌うのは…控えろって。」
そんな
暗くて、深い深い空間に落とされたような気分だった。
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作者名:なえ | 作成日時:2017年9月14日 17時