ねえ、お願い。【歌い手】 (ページ32)

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31話ページ32

目が覚めると、目の前にはそらるさんの顔。

「これ、食える？」

差し出されたのは、綺麗な青色のゼリー。ソーダ味かな。そらるさんの色みたい。

まだうまく声が出せないから、ゆっくりと頷く。

全部食べなくてもいいから、と渡されたゼリー。両手でもってしばらく眺めていると、"…あ、もしかしてひとりじゃ食べずらい…？"とまふくんの声。

再度頷く。

「かして」

そらるさんがリビングに戻ってしまった今、部屋には私とまふくんだけ。ゼリーの蓋をはがす音が響く。

「…はい、あーん」

…予想はしていたけれど。実際されると、恥ずかしいというか、躊躇うものがある。
なんせイケメン。そりゃ恥ずかしくもなる。

でも、ここで食べないとやはり失礼だろうか。意を決して口を大きく開くと、"ふふ、そんなに大きく開かなくてもいいのに"と言いながら口まで運ばれる冷たいもの。

「どう？食べれそう？」

こくっと頷くと、"そっか、良かった"と笑うまふくん。その笑顔に見とれてしまったのは、私だけの秘密。

食べ終えると、まふくんと入れ替わるかのように入ってきたそらるさん。

ん、と差し出されたのは風邪薬。それも錠剤。の、飲めない…！そらるさんを見つめてなんとか伝えようとすると、ニヤリと笑うそらるさん。

「お前、飲めないの？」

頬がかあっと染まるのがわかった。すると上から"飲ませてやるよ"なんて。

「…？」

おもむろにそらるさんは水を取り出し、薬と一緒に口に含んだ。

そしてそのまま、私の目の前に。

「…んっ！？」

慌ててそらるさんの肩を押すと、案外すっと離れてくれたそらるさん。なにか喋ろうとして、反射的に口内のものを飲み込む。

…あ。

「どう？飲めた？」

クスクスと目を細めて笑うそらるさん。その姿はまるでどこかのモデルさんのようで、…この人、ずるい。

私の頬がまた赤く染まってしまったのは、きっと気のせい。