30話 ページ31
「……ちゃん?…A…」
「ぅ…ん…」
微かに聞こえる心地の良い声に目を覚ます。どうやら私は車の中に座るまふくんの上で姫抱きをされていたようで。
恥ずかしくても今は抵抗する力などなかった。
「大丈夫、もうちょっとで病院だからね…」
体が冷えないためだろうか。先程までそらるさんの着ていた上着がかかっている。
しばらくの間ぼーっとしていると、止まった車。
ドアが空いて風が入ってくる。まふくんに軽々と持ち上げられて、そのまま受付を通った。
診察はよく覚えていなくて、気づいたらそこはもうそらるさんの家。
「ん…そらる、さ」
「無理して喋んな、声出ないだろ」
まふくんがそっとベッドに移してくれる。体の節々が痛くて、どうしようもなく人肌が恋しくなってしまう。
「俺らなんか買ってくるから、食べれるやつだけ食べればいいからな」
そう言って立ち上がるまふくんとそらるさん。近くにいたそらるさんの服を掴む。力がなくて握れないけれど、触れるだけ
「…ん?どうした?」
声を出すなと怒られそうで、『いかないで』と口だけ動かす
「はあ…すぐ帰ってくるから、我慢しろ」
『いやです』
「…まふ、お前こいつの隣いてくんない?」
「えっ!?ぼ、僕ですか…?」
「俺買い出し行くから、お前しかいない」
なぜか顔をしたに向けて固まるまふくん。…そんなに嫌だっただろうか。だとしたら少し…悲しい。
「ぼ、僕でいいならっ」
ホッ、とする。ここで嫌だなんて言われてしまったら、泣いてしまいそうだ。上辺でも了承してくれた事に感謝だ。
『ごめんね』
「ううん、全然。辛かったら寝てもいいからね」
ゆっくりと撫でられ、安心してしまう。
私はそのまままふくんの手を握り眠りについた。
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作者名:なえ | 作成日時:2017年9月14日 17時