ねえ、お願い。【歌い手】

21話 ページ22

それからは、本当に地獄のような日々だった。




養子引取り先の家庭は、物凄く穏やかで、優しくて。




でも、そこでその人たちを"家族"と、"お母さん""お父さん"だなんて、間違っても呼べない、呼んではいけない気がした。




…そして、一つ、問題だったのが。




姉だった。
いいや、姉じゃない。
あんなのは姉じゃない。




両親2人の目につかないところで、惜しまない暴力。耐えない暴言。




作ってくれたご飯だってろくに食べさせてくれなかった。痩せていくばかりの私を、両親は心配した。




しかしどうだろう。自分たちの実の娘と、養子で引き取ったなんの繋がりもない私。すがりついた所で、結果なんて目に見えていた。




…ねえ、どうしてよ。憎いのは、暴力を振るいたいくらい憎いのは私の方なのに。




どうして、そんなに幸せそうなあなたに見下されなきゃいけないの…？

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