4話 ページ5
いつもの帰り道。駅まではただ歩くだけなのだけど、この時間がなぜだか好きで。
やっぱり、この夕焼けのせいだろうか。
最近は残業続きで、この綺麗な橙色に染まる空を見ることができていなかった。
このあたりで星が見えないのは、上京してきてすぐわかったこと。
地元じゃあんなに綺麗だった夜空が、都会に来れば真っ暗だなんて。それはどうも、孤独感を煽ってきた。
残業は避けたい。疲れるし、…帰りが辛くなってしまう。
駅のホームで流れる音楽が耳をかすめる。
あ…電車来た。
帰宅ラッシュの人波に身を委ね、流れるように乗車する。
身動きが取れず苦しい。そして自分を取り囲むような人。息が詰まるのがわかる。
はじめの頃は辛くて辛くて、"もう通勤なんて"となんど思っただろう。
今もまだ少し苦しいけれど、だいぶ慣れてきた。
早くつかないか、なんて考える。
最初は、偶然だと思った。
この人混みの中、故意でなく手が当たってしまうことは有り得なくはない。実際、そういった事件が沢山あるのだから。
でも、違った。
段々と速さを増す手の動き。
……気持ち悪い。
ああどうか、早くついてくれ。
いつもは10分程度の乗車時間は、無限に感じた。
周りを見渡すも、眠っている人、端末をいじっている人。
もうだめだ。そう思った。
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_____"大丈夫ですか?"
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作者名:なえ | 作成日時:2017年9月14日 17時