君に贈る歌（緑） (ページ37)

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「なあ～！！！Aちゃん、見てっ！見てっ！！

ペンギンやあ♡」

「ちょ、大倉っ！走んないで！！」

大倉に連れて来られたのは、水族館だった

「遅いって～！ほら、手！」

ん、って差し出された大倉の手を素直に握った

そしたら満足そうに笑って、ぶんぶん振り回すから、「ちょっと！」って言ったら、もっと大きく揺らした

「あのペンギン、Aちゃんに似とるわぁ笑」

「それどういう意味？」

「ふふっ、ほら！あのムスッとした感じ！」

「はあ…？」

パシッて、大倉の腕を叩いた

だったら大倉は、1羽だけずっとプカプカ水に浮いてる、やたらデカイあのペンギンに似てるって言ったら、

大倉は、あっはっは！って、私の大好きなくしゃくしゃな顔で笑った

それから、イルカショーを見たり、グッズコーナーで騒いだり、時間があっという間にすぎた

大倉は、不思議な人だ

一緒にいるだけで、楽しくて、あったかくて、幸せな気持ちになる

2人で何度も何度も顔を見合わせて、笑いあった

「楽しいなあ」って小声で言った大倉の言葉に、思わず泣きそうになった

「Aちゃん、お腹空いたやろ。
なに食べたい？」

水族館を出て、大倉と大通りを歩く

「うーん、大倉は、なにが食べたい？」

「俺？俺はな～、ラーメン！

それに～、もんじゃ焼き！！あ～、寿司もええなぁ！！」

「１つに絞ってよ笑」

ゆっくり、ゆっくりと歩幅を合わせて歩く

でも、確実に『その時』が迫っていた

『「Aちゃん！信号変わってまう！！」』

え……？

私の手をとって走り出した

頭が、ガンガンする……

１つ１つのピースが、確実に形になっていく……

グルグル、グルグル

自分がどこにいるのか分からなくなった

『Aちゃんっ！』

『Aちゃーーん！』

ニコニコして、私の名前を呼ぶ、

『待って！忠義っっ！！』

どうして、ずっと忘れていたんだろう…

こんなにも、大切な人を……。

やっと、やっと、思い出した

忠義……。

ずっと『あの夢』に出てくる彼は、忠義だったのね……。

忘れてて、ごめんね……

私はそのまま意識を手放した