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触れた唇は一瞬にして離れ。

腕を引っ張られて背伸びしたままのおれは、だいちゃんから目を逸らせずにいた。


「ねぇ、俺のこと、まだ好き?」

「ふぇ、だいちゃ、……んんっ、」


ぎゅっと、もっと強く腕が引っ張られて、さっきよりも強引に唇が重なった。


「……んゃっ、……ふっぁ、……だ、い……ちゃ、っあ…」


ちょっとまって、おかしいよ。

おれ、男で、だいちゃんも男で、幼馴染み、なのに。


口の中を動くだいちゃんの舌は、なんかもう、物足りないぐらい優しくて。
間違って受け入れちゃいそうになる自分もおかしかった。


「っは、ぁ。……なにしてんのだいちゃん、」


ほどかれた腕を撫でて、どうかちょっとでも怖がらせることができますようにってだいちゃんを睨んだ。


「なにって、キスだけど。いのちゃんも、もう俺が子供じゃないって、ちゃんとわかった?」

「……だいちゃんのこと、子供だなんて思ったことない。」


カウンターの後ろの壁、ギリギリまで下がってそういうと、大ちゃんは少しだけ瞳を揺らす。

それから、軽い音をたてたスマホを見つめた。


「知念たち、もうすぐ帰ってくるって。」

「へぇ、」


よかった、山田と知念くんがいれば、きっとだいちゃんはなにもしない。

……いやいや、なにもしないって逆におれ、なにされると思ってんの?


置いてあった自分のカップに入ったコーヒーを一口飲んで、心を落ち着かせる。


「……いのちゃん、」


心なしか不安そうな大ちゃんに、ぐらぐらと心が揺れる。
ここでほだされたらもう戻れないって、なんだか、そんなような気がした。

大ちゃんの、艶やかに水分を含む唇から出た言葉。




「俺、いのちゃんと二人きりになりたい。」



もしかしたら、だいちゃんってほんとは耳も尻尾もある、おおかみなんじゃないかって。

低く出された声に、無条件に響く鼓動がそんなことを思った。

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作者名:鎖空 | 作成日時:2017年6月28日 21時

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