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「……わあ、…おっきいおむらいす……」

「え、?」


ふにゃん、と口元を緩ませて寝ているだいちゃんが放った言葉に、心臓が止まるかと思った。


だって起きたら、こんな近くにいられないわけだし。



「……起きちゃ、だめだよ。」


ばくばくする心臓を抑え、だいちゃんの隣のカウンター席に座る。

幼さの残る顔にかかった髪をどけてあげた。さらさらしてて、気持ちいい。



「……ふぁ、いのちゃん……?」


そのまま髪を撫でていると、舌足らずな声が聞こえた。

ゆっくりと瞬きをした瞳には、確実におれが映っていて。唯一の救いは、まだ焦点が定まっていないこと。



「…ふふ、ひさしぶり……おれに、あいたかった…?」


ふんわりと笑って、弱い力でおれの手首を握る。


「……あたり前じゃん、ずっと会いたいって思ってるよ。」

「……なら、ずっとおれのそばにいればいいのに。」

「それができるなら……もうしてるよ。」


それができないから夢心地なだいちゃんとしゃべってるんでしょ。


そう心でぼやくと、


「……あ、れ、いのちゃん!?」


きちんと焦点の合った瞳と目があって。
慌てて掴まれていた手首をほどいて店のドアへ。


「ちょ、ストップ!」


ドアノブを掴むも、その上から手のひらを重ねられた。



「なにしてんの、いのちゃん。」

「な、に……って、」


思った以上に近い距離で聞こえた言葉にずるずると座り込んでしまった。


「ね、いのちゃん?」



身長の関係がなくなったせいで、もっと近くで、後ろから聞こえる声。


体温も、言葉も、息遣いも…………すべてが、近くて。

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作者名:鎖空 | 作成日時:2017年6月28日 21時

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