冒険の傷痕:24 ページ26
「…いないな」
「いないね」
小屋の中はもぬけの殻で、じゃああの犬はどうしたものかと三人で唸っていたところ、カミュがあっと短く声を上げた。
「どうしたの、カミュ」
「あー、あーいや、関係ないかもしれねえな」
ただ不思議な形の根っこを見ただけでよ、と頭をがしがし掻いて言葉を濁した。
「不思議な形の根っこ?」
「おう、キャンプ場の近くに、でかい岩で出来た細道あったろ。その奥でそれを朝見つけてさ、いや、ほんとなんでもねえと思うんだけどよ」
「…行ってみる、イレブン」
「…行ってみようか」
手掛かりがないんだから、なんでもないと思ってたってとりあえず行ってみないと分からない。だから、カミュの言う不思議な形の根っこを探すことにした。
自分の身長を遥かに超える岩の壁をなぞりながら、細い道の行き止まりに辿り着く。
「ほら、あれだ」
カミュが指さした先には、確かに不思議な形をした根がそこにあった。周りには淡い光が揺らめき、幻想的な、神秘的な空間だった。
もっと近くで見てみようとその淡い光を放つ根に近づくと、イレブンの左手にある痣が光りだした。
イレブンが左手を根にかざすと、痣と根の光が増し、やがて真っ白になった。
浮かび上がったのは、小屋とそこに住む木こりだった。
どうやら、直したばかりの橋をいたずらデビルに壊され、さらにそのいたずらデビルに犬にされてしまったらしい。
いたずらデビルが空の宝箱に隠れたところで、幻のようなものは消えていった。
「今の光景は一体なんなんだ…イレブン、お前この光る根っこに何かしたのか?」
カミュがそうイレブンに問うと、イレブンの代わりにに犬がクゥーン、と鳴いた。
「マジかよ…このワンコロが木こりのおっさんだってのか…」
やれやれとカミュは腕を組めば、勇者様との旅は退屈しそうにないと呟く。それには大いに同感である。
「まぁどのみち橋が直らなきゃ、オレ達は森から出られない、か…」
犬にされた木こりの呪いを解くべく、私達は魔物入りの宝箱を探しに来た道を戻り始めた。
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千織(プロフ) - チロル/CHIROLさん» チロルさん、初めまして!有難いコメント、とても嬉しいです…!これからも精進していくので、見守って頂けたらと思います! (2018年11月3日 7時) (レス) id: 43a89afe6e (このIDを非表示/違反報告)
チロル/CHIROL - はじめまして!ドラクエファンなので、ドラクエの夢小説を書く人がいるのか!と驚き拝見させていただきました!掴みにくい世界感を表現されていて千織さんはすごいと思いました!これからもがんばってください! (2018年11月2日 22時) (レス) id: f7aec74604 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:千織 | 作成日時:2018年10月29日 20時