冒険の痕跡:9 ページ11
Aと名乗った少女は、三年前に村を抜け出してそれから一人で旅をしているらしい。
「…へえ、ずっと一人で旅してきたの?すごいね!」
目をキラキラさせてすごいすごいと手を叩くイレブンに、Aは苦笑しながら少し悲しそうに目を伏せた。
…?
さらにAは一年前に、ある占い師にお告げを聞かされたらしい。
「──勇者と共に旅をせよと、お告げを頂いたのです」
「勇者?」
「はい」
「勇者なら、ボクだけど」
イレブンはそう言うと、自分の左手の甲にある紋章の痣をAに見せた。
「お前なぁ、簡単にそんなこと、」
仮にも追われている身なのだ。そう容易く身分を明かされても困る。
しかしイレブンは特有のほんわかとした笑顔で、
「この子は嘘言わないと思うし、悪い子じゃないよ」
ね?とAに向かって首を傾げる始末だ。
「…あ、じゃあ城下町で聞いた脱獄した二人組って、イレブンさんとカミュさんだったんですね」
「おう、オレも預言があってな。今日脱獄しようとは思ったんだがまさかその日に勇者サマが現れるなんてよ」
「カミュさんも預言があってイレブンさんの仲間になったんですね」
「あぁ、そんなところだ」
なるほど、そんなことが…と呟いたAは、一呼吸置いてから真っ直ぐな目でイレブンを見据えた。
「もしご迷惑でなければ、私も、貴方々の旅に連れて行って頂けませんか」
こんなときまで、Aは堅苦しい敬語を外さない。歳の割に大人びた顔をするもんだ。
「…カミュ」
Aの申し出に、仲間の意見を聞きたいのかイレブンはこちらを向いて確認を取ってきたが、
「…お前の旅なんだ。お前が決めろよ、勇者サマ」
「…うん。そうだね」
きっと答えは決まっている。
イレブンは再びAの方を向き直すと、真っ直ぐな目を見つめ返した。
「ボクは、君が思うような【勇者】じゃなくて《悪魔の子》かもしれない。君を傷付けることになる事が、あるかもしれない。
それでも君は、ボクに付いてきてくれる?」
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千織(プロフ) - チロル/CHIROLさん» チロルさん、初めまして!有難いコメント、とても嬉しいです…!これからも精進していくので、見守って頂けたらと思います! (2018年11月3日 7時) (レス) id: 43a89afe6e (このIDを非表示/違反報告)
チロル/CHIROL - はじめまして!ドラクエファンなので、ドラクエの夢小説を書く人がいるのか!と驚き拝見させていただきました!掴みにくい世界感を表現されていて千織さんはすごいと思いました!これからもがんばってください! (2018年11月2日 22時) (レス) id: f7aec74604 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:千織 | 作成日時:2018年10月29日 20時