四畳半トリップ~《アズカバンの囚人》起~【ハリー･ポッター】 (ページ38)

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クィ「まさかだとは思いますが、あなたはあんな占い信じませんよね」

『信じるわけないだろ』と私は昼休憩の最中、自室に戻ってのんびりと本を読んでいた。

そんな自室の中で、クィリナスもリドルも思い思いに本を読んでいる。

『まあ、でも私のティーカップに出たグリム以外のことは信じるかな』

ふしぎなほどに皮肉な響きのしない、親身とさえ感じられるような穏やかな口調で言い、伸びをして目を開けるとクィリナスは口を開けていた。

開いた口が塞がらないと言ったところであった。

ト「大鎌、狼、花瓶に鍵穴。まあ考え方を変えれば当てはまるかもしれないけど」

そう悪戯げに笑いながら、頬杖をついて本を読むリドルの態度にクィリナスは私とリドルの間に何があったのかと、聞きたそうな顔をした。

クィ「そうですか！そうですか！私は蚊帳の外ですか！」

『あ、あーあ』と私は本を閉じて、文学的理想郷へと飛び立とうと読書に邁進するクィリナスを見た後にリドルを見た。

彼は何とも思ってなさそうに綺麗な横顔で本を読んでいた。

しかしそんな綺麗な横顔の中で唇の端が嬉しそうにわなわなと動いている。

クィリナスはしきりに「嘆かわしい、嘆かわしい」と呟いていた。

そのくせ全然嘆いている風ではない。

クィ「どうせ世の中、永劫回帰なんですよ。未来永劫、子々孫々、万劫末代。世の中で起きる全ての現象は永遠に同じことを繰り返しているんです」

クィリナスがらしくないことを言うものだから、私は瞠目を見張り、彼が読んでいる本を軽々と手に取った。

重々しい本でヴィンテージを感じさせるそれに金の文字で''ニーチェの入門書''と書かれていた。

私はこのとっさの気まずい場面を繕うため何か言葉を入れてその不愉快な緊張をゆるめようとしたが、何とも言葉は出てこなかった。

そんな気まずい空間を破ったのはトム･リドルであった。

ふと顔を上げた彼は「哲学に逃げたな」とせせら笑った。

クィ「逃げたなんて失礼な、哲学とは知を愛することです。博識と言ってもらいたいものです」

私は本をクィリナスに返して、居心地の悪い思いを感じながら、窓の外を見た。

昨日の雨はもう上がっており、少し湿気が多い感じがした。

『永劫回帰ね』

私は小さくその言葉を口の中で回しこんで、胸に納めた。

前にもそんなことがあったような気がしてならないが、私はその思いを打ち明けず、目を伏した。