四畳半トリップ~《アズカバンの囚人》起~【ハリー･ポッター】 (ページ26)

今日:4 hit、昨日:9 hit、合計:18,305 hit

２６ページ26

〇

やっと、列車がホグズミード駅に停車すると、皆んなが下車するので騒がしくなる。

ふくろうがホーホー、猫はニャーニャー、ネビルのペットのヒキガエルは帽子の下でゲロゲロと鳴いていた。

そんな中で不服げな私は腕を組み、そばを歩くフェレットを抱き抱えることなく歩いていた。

狭いプラットフォームは、凍るような冷たさで、氷のような雨が叩きつけている。

周囲の人波が、私たちをプラットフォームから逸れる方向へと押し流してしまう。

その流れについて行って、でこぼこのぬかるんだ馬車道に出て、そこに、ざっと百台ほどの馬車が生徒たちを待ち受けていて、それぞれの馬車が動きはじめていた。

私たちはディメンターのことがあってから口数が減っていた。

その上、空気を吸ってくるといった私が機嫌が悪くなって帰ってきたのだから、空気は尚更最悪なものへと変貌していた。

無論、リドルのせいである。

馬車に乗り込んで扉を閉めると、独りでに馬車が走り出し、ガタゴトと揺れながら隊列を組んで進んで行く。

馬車は微かにカビと藁の匂いがし、ロンとハーマイオニーは、私とハリーがまた気絶するのではないかと心配で、横目でしょっちゅう見ていた。

馬車は、壮大な鋳鉄の門をゆるゆると走り抜けて行く。

門の両脇には石柱が並び、その上には、羽を生やしたイノシシの像が立っているのだ。

そうして聲え立つようにしてディメンターが二体、頭巾を被り、門の両脇を警護していた。

馬車は止まるために傾いてから停車し、ハーマイオニーとロンは、馬車を降りる。

あとから私とハリーが降りたと同時に気取ったような声が聞こえ、ハリーは反射的に顔を顰めた。

ド「気絶したんだって？ロングボトムは本当のことを言ってるのかな？本当に気絶なんかしたのかい？」

『心配してくれるなんて嬉しいな。どうも、私たちは元気だよ』

嫌味な言葉の裏に隠れた優しさに私は気づいて、そんなことを言うと微かに笑って、城へ石段を登っていく。

ハー「まあ、珍しいこともあるものね」

そう感心するハーマイオニーの隣では絶対に信じないぞとハリーとロンがドラコの後ろ姿を睨んでいた。

数分後、ハリーとハーマイオニーはマクゴナガル先生に呼ばれて行ってしまったので、私はロンと共に汽車を降りて先に大広間に向かった。

奇々怪々とした人の目が私を見つめていた。

ブラック、ブラック、ブラック。

この名に悩まされる年が幕を開けた。