四畳半トリップ~《アズカバンの囚人》起~【ハリー･ポッター】 (ページ22)

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「お願い、言って」とハーマイオニーは声を震わせ、私の手を包み込んだ。

ハーマイオニーだと思われる手の温かさの中に底知れぬ怖さが眠っていることを私は知らさせる。

『多分、大丈夫────何かあったって、ほら闇の魔術に対する防衛術の先生がいるし』

ロ「その先生が去年みたいに能無しか、一昨年みたいに手先じゃなければね」

『そんな事言うなよ……』と私は口をすぼめて、座席に沈みこんだ。

ヒタリヒタリと何かが近づいているのは確実でコンパートメントの中の空気が張り詰めてくる。

その緊張を打ち破るのは心地の良いルーピン先生の寝息だけ。

するとコンパートメントのドアが急に開き、誰かがハリーの脚の上に倒れ込んで来て、ハリーは痛そうな呻き声を小さくあげた。

ネ「ごめんね！何がどうなったかわかる？痛ッ！ごめんね」

「やあ、ネビル」と言ったハリーは、闇の中を手探りでネビルのマントを掴み、助け起こしたのかそんな音をガソゴソとさせていた。

ネ「ハリー？君なの？どうなってるの？」

ハ「分からない、座って────」

シャーという鳴き声に続いて、ネビルの痛そうな呻き声が闇の中にぽつりと広がる。

『ちょっと待って、ここは私が座ってる』

「あ、ごめんね、A」と返事をしたネビルの傍らでハーマイオニーが「運転手に聞いてくる」と言って私の前を通り過ぎたような気がした。

それから、ドアを開ける音、続いてドシンという音と、痛そうな叫び声が二人分聴こえるのだ。

ハー「誰？」

「そっちこそ、誰よ？」

ハー「待って、あなた、ジニーね」

ジニ「ハーマイオニー？」

どうやら原作通りジニーとネビルがこのコンパートメントを訪れたあたり、言わずもがな方向は定められたよう。

またネビルが私の膝の上に座ろうとしたのか、膝の上に居座っていたフェレットがネビルに攻撃を仕掛け、私はフェレットを腕の中で抑え込む。

「静かに！」と、突然しわがれ声が辺りに響き、水面に水が落ちるようにピタリと音が止まる。

ルーピン先生が目を覚ました。

柔らかな、カチリという音のあとに、明かりが揺らめき、コンパートメントを照らし出す。

ルーピン先生が手のひらいっぱいに炎を持っているよう、炎が、先生の疲れたような灰色の顔を照らした。

目だけが油断なく、鋭く警戒している。

ルーピン先生の目が私に止まり、少し見開かれたと思えば徐ろに立ち上がり、手のひらの明かりを前に突き出した。