四畳半トリップ~《アズカバンの囚人》起~【ハリー･ポッター】 (ページ19)

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『君たちに言う時間がなかったんだ』と言い訳じみたことを言ってから、私は座り直した。

『簡単にいえば────私は知らない』

間抜けた回答を返すと、三人は頭を傾げて各々素っ頓狂な声を洩らした。

ハ「それって？」

『もっと端的に明確に言うなら、覚えてない』

「もっとわかりやすく！」と言ったハーマイオニーは半ば私の方へと前のめりに来ている。

『私が若返りの呪いを受けたのは知ってるだろ？その時に両親の記憶やその他諸々親戚やら何やらの記憶が抜け落ちたんだ』

『だから私には両親はいないし、親戚も知らないし、もっと言うなら、シリウス・ブラックなんて今年知った』と私はフェレットをふにふにしながら言った。

少し自嘲気味で三人は顔を見合わせて、労うような表情を浮かべている。

ロ「ダンブルドアは教えてくれないの？あの人は君の親代わりみたいな人でしょ？」

『そうとも言う、けどそうとも言いづらいな』と私は呟いた。

『あの人は教えてくれないと言うより、あの人も忘れてるんだよ。私の両親のことを……正確に言えば両親が何らかの呪文で存在を消したか、消されたか』

コンパートメントは密度の重い沈黙に満たされ、ルーピン先生の穏やかな寝息とフェレットが私から逃れようとする音だけが響いた。

少しその沈黙を私は容赦なく切り捨てた。さながら池田屋に切り込んだ新選組のように。

『だからよく知らない。もしかしたらシリウス・ブラックは私の両親かもしれない───でも、ありえないけどね』

「まあ、そうだよな」とロンは気まずそうに体をモジモジさせてから私を見据えた。

ロ「ハリーとAは狙われてるんだろ？もしシリウス・ブラックがAの親だと仮定したら、狙うなんておかしな話さ」

「ねえ、捕まるわよね？」と言ったハーマイオニーは心底心配そうに片眉を無意識に吊り上げていた。

ハー「だって、マグルまで総動員してシリウス・ブラックを追跡してるじゃない」

『どうだろ』と呟いた私に彼女はまた心配げに体を座席に埋める。

ハ「そのせいで、僕は残念ながらホグズミードに行けない。ずっとホグワーツの中さ」

ロ「そんな、そりゃないぜ──── マクゴナガル先生か誰かが許可してくれるよ」

『ひとつ言うけど私もホグズミードには行けない』とため息混じりに声を洩らす。

『ダンブルドアがサインしてくれるはずない』

そう言うとハリーの瞳がかすかに安心したように見え、彼はその瞳を私から隠した。