四畳半トリップ~《アズカバンの囚人》起~【ハリー･ポッター】 (ページ12)

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狸を連れて行くわけにもいかず、私はリドルをじっと見つめて頭を傾げた。

ダイアゴン横丁に狸を連れていけば、面白がってリドルを買おうとする輩がいるかもしれない。

私としては嬉しい限りだが、こんな邪悪で愛嬌を振りまく狸を放っておけない────ふわふわな毛は私のだ。

むしろリドルを買う輩がいるのならば、リドルが私を裏切るのならば、リドルが私を殺そうとするのならば────

私はリドルを喰ってしまいたい。

『君、ひとつ尋ねてもよかろうか』と私は偉い人のように声をつくって、面倒くさげな狸を見下ろした。

リドルが返事をしないのはいつもの事だが、さすがに返事をして欲しかったのは否めない。

『姿を変えれない？』

「何を言ってるんだ」とすぐに返答したあたり、私をわざと無視していたのは明らかだ。

『だって君、狸だろ？』

こちらにむかって首をかしげる。

不覚にも可愛いと思ったのは言うまでもない。

ト「君、変な妄想を膨らませているところ悪いけど、この狸が一番省エネなんだ」

『あ、ああ、違う違う────こう葉っぱを頭の上に乗せて化けてよ』

私は窓の外へと手を伸ばして、窓枠にあった葉っぱを手に取って、フワフワの頭に乗せた。

『ほら、化けて見せてよ』とにこやかに言った私の顔にリドルは葉っぱを突き返した、と言うよりも押し付けた。

ト「化けれない、そもそも狸が化けるなんてどこの話なんだね」

私は少し間を作ってから、意味ありげな漬物石よりも重みを持って呟いた。

『故郷からさ』

リドルの目が一瞬細められてから、渋々といった感じで葉っぱを頭の上にのせて何に化ければいいと返答する。

蛇はなしで、蛙は────もう一匹いるし、鳥だと勝手にどこかへ飛んでいきそうだし。

私はいいことを思いついたみたいに、手をパチンと鳴らした。

『君、フェレットになってよ』

〇

ダンブルドアの勝手な行動はしないで欲しいという忠告を破った私はダイアゴン横丁に来ていた。

無論、蛙はいない。いるのは肩の上に乗ったフェレットだけであった。

そうしてダイアゴン横丁を闊歩しているうちに、私は目的の人物たちを目の端で捉えることが出来た。

フローリアン・フォーテスキュー・アイスクリーム・パーラーのテラスに、三人とも座っている。

私はこちらに気づいて手を振る三人に勢いよく駆け出したので、肩にいたフェレットは私の上着についてあった大きめのポケットに転がり込んだ。